腐っても大丈夫!いや、腐りきった方がいい! ~とある企業のプレゼンにて
発酵と腐敗は紙一重
今日は、最近の仕事であった「腐ってない?この会社!」と感じた実例を基にしたお話し。陰極まって陽となす、という話である。
それは、当社がとある大手企業からの依頼で、研修コンサルティングの提案を役員にプレゼンするシーン。
お客さまから「客先でのプレゼンの勝率が良くない」という相談を受けて、当社で企画した提案をプレゼンするシーン。
今までは窓口の方から、課題や提案の方向性などを共有していたが、役員の方とお会いするのは今日が初めて。私も、気持ちを落ち着けて、万全の準備で望んだ。
プレゼンが始まってすぐに違和感を感じた。
なんだか、役員や部門長の方の空気感が重い、キツイ。プレゼンを進めれば進めるほど、圧が強くなってくる。そう感じたら余計に、なんだか上から目線のような、高圧的な雰囲気をアチコチから感じる。
プレゼンのスタート時も、役員の方は挨拶も自己紹介もなく「さっさと始めちゃって」という依頼から始まる。そしてプレゼン中には苦虫をつぶしたような表情で頬杖をついて聞いている。さらにプレゼン中にも「ページ戻して」「その説明は飛ばして!」と口を多数挟んでくる。途中で、上席の役員が来場したので、またプレゼンをやり直すものの、また最中に口を挟んでくる。先方のイライラした雰囲気が、否が応でも伝わってくる。
こちらの企画や伝え方が悪いのか、そう感じることもあったが、それはこちら側の問題だけではなかったことを後で感じる事となる。
プレゼンは10分ぐらいにコンパクトに収めたので、すぐに終わった。いや終わらせられた。プレゼン終了とともに、口火を切ったように苦言を浴び続けることとなった。
「今までの業者はこの価格、このやり方でやってきたのに、何でこんな提案なの?」「研修なんて依頼した通りにやってくれればいいんだよ!」「色々付けて、釣り上げてんじゃないの!?」。おまけに、同席していた講師がいるにも関わらず、「こんなベテラン講師連れてこなくていいのに、うちは社員が若いから、デビューしたての若い大学生みたいな講師でもいいんだよ」。(オイオイ、目の前でそれは失礼じゃないか!)さらに、同席していた自社の担当者にも「お前がちゃんと伝えないから、こんな提案になっちまったんだ」と叱りつける・・・(もうやめてーーー)
久々に凍りついたプレゼン空間だった。しかし、だからこそ逆に途中から冷静になって、色々思索を思い巡らせるに至った。
この会社の課題はプレゼンの勝率が低いことと伺っていたが、すぐに悟った。真の課題は、プレゼン力や営業力の問題以前に、この会社の体質にあるのでは?と。役員など上層部が発酵していないから、組織が腐りかけているのでは?
そして、このような社風、上司では、部下や前線にいる社員も、それこそクライアントのための仕事=プレゼンをするよりも、単純に会社の数字目標を達成させることだけ、あるいは上司の顔色を伺うような仕事しかできないはず。さらにこの会社の取引先さえも、モヤモヤしているかもしれない。
社員の事を考えると、なんとかしてあげたいな、、、そんな事を感じつつも、今はここは引くべき!と判断して、コンペから降りさせていただいた。無理強いをする、こちらも無理をする、無理に変えていく、のは発酵学的に、双方に良いことがないと思ったからだ。
今日のこの出来事は、組織発酵学的にも、非常に大きな学びを頂いた、と感じたのである。
それは、ここまで腐りきってしまうと、あとは発酵する方向に転じるはず、転じる兆候が出てくるのでは、という期待である。
「陰極まりて陽と成す」
中途半端に腐敗を隠し続けるのではなく、思い切り腐りきってしまうと、あとは腐った中に違う発酵の菌が芽生え、発酵サイクルに転じる。そんなことを今日のプレゼンシーンを振り返って感じたのである。
そう思った「きざし」がいくつかあった。私に依頼してきた担当者は「なんとかしたい」「このままではマズイ」という想いをビンビンに持って熱意をもっていたこと。そして、上席の方が成果を焦っているのか「課題感」を強く持っていることは間違いない、と感じたこと。これらは、発酵学的には、陰の中に陽のきざしがある、
この図をご存じの方も少なくないでしょう。黒い中に白い点があります。これは陰(黒)の中に、陽(白)が生まれていることを示しています。
腐りきってしまった方が、早く痛みや問題に気づき、これはマズイ!と内的に、あるいはお客様など外圧的に、変化やターニングポイントが来るのではないか、という流れ、反転である。
人間も同じようなことが沢山ある。
食べ過ぎ、呑みすぎたら、アラームが鳴る。
わがままし放題したら、他人からもアラームが鳴る。
僕も過去に天狗になって傲慢だったから気づけた事があった。
今回の企業にも感じたのは、この組織も今回のプレゼンの勝率を上げたい、という課題が行き詰まって、ニッチもサッチもいかなくなり、プレゼン以前の内部的な課題に真因があることや、お客様からの声、業界の変化などで痛感するのかもしれない。と、そんなことを感じたのである。
腐った状態、悪玉菌優位の状態に、どこかで気づいて頂けることを切に願う。腐りきったからこそ、早く組織を発酵サイクルに転じる機会が、きっと訪れるはず。
その時は、私も気持ちよく、この会社のお役に立ちたい。それまで、自分たちは、自身を練って、磨いて、お役に立てるように成長しておこう。そのために今回の出来事があった、そう信じたい。
腐りきっていても転じる機会はやってくる
腐った経験は、何かの学びになるはず
繋がっていれば、腐っても、またお互いに一緒になれる
こんなメッセージを頂くことができた。僕たちの会社にとっても、発酵(成長)の機会として捉えられる、貴重な出来事でした。
<今日の組織発酵学 標語>
「腐っても大丈夫。いや、腐りきったほうが、いい」
組織発酵学プロデューサー
Brew株式会社 代表取締役
原 佳弘