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性的に少数な生き方をしている人が映画版朝井リョウ「正欲」の評価を改めた話

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過日朝井リョウ原作「正欲」の映画版を鑑賞したが、
40歳まで恋愛経験なし独身処女、新興宗教2世というマイノリティのロイヤルストレートフラッシュをキメている私にとっては主人公たちの話す心細さが甘い!甘すぎる!などと感じ、勢い余って不幸マウントを取らせていただくなどしていた。
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しかしなんと、
今年の正月に実家に帰った際、
この映画が私の心をあたためてくれていることに気がついたのだ。

そんなバカな……と思ったが、
母親とまさに「はじめてのおつかい」のCMを見ることになったのだ。
その時は、私よりも老いた母親の方が気まずそうにしていたが……

その瞬間、新垣結衣が今の私とまったく同じシーンを演じてくれたこと。
朝井リョウという人気作家が、この何気ない年末の一瞬を、マイノリティが浮き彫りになる瞬間として描いてくれたこと。
そうしたことがものすごく心強くて、自分でも驚いた。

ここだけではない。
年末年始の番組が、お正月商戦に賑わう街が、
日本国民全体の家内安全・無病息災を祈るために、
「家族」や「団欒」といった表現を雑に使うから、そのたびに、小さな自分が見過ごされ、私には関係ないことだ……と小さく傷ついていたのだと思う。
自分でも気付かないくらい。

でも、そのたびに、「年末年始って人生の成績発表みたい」と言った、新垣結衣演じる桐生と、それを受け止めた佐々木と、そういうセリフを編み出した朝井リョウの存在を幾度となく思い出すことになった。

年末年始になぜか心細さを感じる人が、今も日本のどこかにいる。
会ったこともないその人の、その気配を感じた。

2024年の年明けは地震や飛行機の事故のニュースであまり明るくなく、
自分の孤独に浸りこむのもある種不謹慎というか、もっと大変な思いをされてる方もいるのに、自分のしょうもない些細な痛みばっかりに注目するのも違うという空気感になったと思う。
とはいえ正月休みが開けたら、この朝井リョウの「正欲」に関する評価を改めなければと思った。

年末年始の心細さから救ってもらったのに、不幸マウントをとったままではカッコ悪すぎるから。

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