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妖刀伝説の真実に迫る!万華鏡を覗き込んだ観客の見たプリズム:ミュージカル刀剣乱舞千子村正蜻蛉切双騎出陣感想


コロナ禍に入ったばかりのころ無料配信を見せてもらってからというもの、
すっかり刀剣乱舞のファンである。
ステもミュも配信で一通り見させてもらったが、
今回は話題の村正派双騎出陣ということで、
チケットの値段は極力見ないようにして、
豊洲のIHIステージアラウンド東京まで行ってきた。
日本史や刀剣の知識に触れたのもほんのここ2〜3年、
の完全なニワカによる感想です。
ネタバレあり。
ご興味がございましたらどうぞ。


マジで何も分からなかった、だが……


マジ何にも掴めなくて、
でも、大好きな二人(二振り)がずっと舞台にいるので……
何かしらを掴みたいと思って舞台を凝視したが、
すべての解釈が、指の間からこぼれ落ちていくようであった。

家路につき、返る道すがらYouTubeで村正の妖刀伝説について補足的な知識を取り入れながら、
もう一度、一つ一つのシーンを思い起こしてみた。
YouTubeのゆっくり解説が間違っていなければ、
「妖刀村正」と言われて最初に思い浮かぶエピソード、すなわち徳川三代を祟った、というのは、後世に後付けされた、創作の逸話であろうとのことだった。
しかし一方で、村正の作刀した刀は多く、多くの人の手に渡ったことから、不思議な逸話が生まれるのも無理はなかった、と受け取れた。
だから、私がこの舞台で見た千子村正というのは、
初代千子村正が作刀した、複数の刀の集合体だったのではないかと考えた。
ある村正は、「かざぐるま」を口ずさむように、あたたかな眼差しを人に向け、
ある村正は、「妖刀」の名にふさわしく、戦場でたくさんの血をすすった。
そうした村正の作刀した刀のありとあらゆるあり方を、万華鏡のプリズムに例えて、すべてつかまえて、演劇の形にしたのが今作だったのではないかと。
……自信ないけど。

少なくとも、この舞台を作った者はこのIHIステージアラウンド東京という非常に珍しい舞台を「万華鏡」に例えて、
客席からの見え方を万華鏡の穴を覗き込んだようであるようデザインしたことは確かだと思う。
当初の予定ではとっくに壊されているはずのこのステージアラウンド東京が未だ存命で、こうして様々なクリエイターのキャンバスたりえていることは豊かだなと思った。
この劇場を見て、「万華鏡みたい」、とは、
わたしには思いつかなかったから。

こうして村正双騎を観に行かせてもらっておいてなんだが、
わたしはゲームでこの二振りをまだ修業に行かせていない。
なので、この二振りがどういう変化を経て、本丸に帰ってきたかまだ知らないのだ。
しかし、様々なエピソードが勝手にくっつけられたり、剥がされたりする千子村正ではあるが、
本当の心の奥底は孤独ではないのだと思った。
同じ刀派の蜻蛉切が、村正のことを深いところで理解しているし、そばにいるからだ、と受け取った。

わたしは難解な展開を少しでも理解しようと必死で、舞台を睨みつけるように凝視するのみであったが、
隣のお姉さんは中盤以降ポロポロと涙をこぼしていた。
時を同じくして、客席のそこここから、鼻水をすする音が聞こえてきた。
村正派二振の心の物語が、
届くべき人の心に、キチンと届いているのだと思った。
めちゃくちゃ羨ましかったです(笑)

歌上手すぎだろ


あえて語るまでもなさすぎるが
二人とも歌がうま過ぎる。
一部は物語の意味をなかなか掴めず苦戦していたが、しかし太田基裕の歌声をきくだけでなんだかじ〜んとしてしまった。
そりゃあこんだけ出番の多い舞台でずっと歌ってたら負担もあろうが、
この2人にはずっと歌っていて欲しいと思わされてしまう。それこそ休みなく永遠に……だって歌がうますぎるから……
高いレストランのオススメ料理みたいな味がする。ような気がするのだ。
こってりしていて、繊細で、ボリュームがあって、、、
おいし〜〜〜ってかんじ。
歌なんだけど。 

そもそも太田基裕とSpiが好き


太田基裕の実物を見るのは実は初めてだったのだが、彼自身キャリアのある役者で、
Spiにしても最近は東宝の舞台に出たりして、今やすっかり実力派のポジションだ。
そういう危なげ無い二人の、安定した演技、うますぎる歌、出す雰囲気の豊かさ……
そうした安心感に、こちらも安心して彼らにすべて委ねることができた。
若い役者の精一杯を見せてもらうような舞台もたいへん気持ちがいいものだが、こうした実力ある役者の舞台で客席で100%受け身でいさせてもらえるのもまた至福だ。

ていうかわたしは先日
舞台版xxxHOLiCを配信で見させてもらってからすっかり太田基裕のことが好きであり
なんでブリーチ(朽木白哉)の時に2.5追ってなかったんや!と自分を責めていたところであった。
やはり太田基裕は千両役者であるとの確信が強まった。
また以前、刀剣乱舞ラジオを聴いていた時は、
鳥越裕貴とフザけるのがめちゃくちゃ面白かった。
内向的な人とのことだったが、それゆえに内面が充実している人のように感じる。

またSpiさんに関してもYouTubeの僕たちの遊び場などで言われている通り、めちゃくちゃ後輩から好かれているというのが伝わってくる。
他の役者の「Spi大好き」がこっちにもうつるというか(笑)
体格以上に人間がでかい、なんて
なんと素敵な人なのだろう。
歌については三百年の子守唄の初出の時からそうだったが、彼の歌声には誰もがポカンとしてしまう。

も〜ともかく他の舞台でバリバリ座長をやるクラスの二人の舞台なんだからそりゃ良いに決まってるんだよ〜〜〜〜

IHIステージアラウンド東京でミュージカル刀剣乱舞を観劇した感想


私が座ったのはDブロック23列19番
事前にSNSで「ステアラは見えない」と散々言われていたため心底ビビって座席についた。
結論から言うと、意外とストレスなく見られた。

何度もこの劇場からの配信を見たことがあったが、
全景のカメラだとものすごく舞台が広くて、役者が小さく見えたので、もっと大きい劇場なのかと思っていた。
なので、入って第一印象は「意外と狭い?」だった。
帝国劇場とか日生劇場の方が広く感じるくらいだ。
座席を中央ブロックだけに限ればクリエとかサンシャイン劇場くらいのこじんまり感さえあり、
これならよく見えるかも、と一瞬期待したが……
いざ本編が始まるとオペラグラス掲げっぱなしとなり、やっぱり少し遠いかな?と思った。
座席の密集具合に対して、舞台がものすごく広い。
座席が丸ごと動くので、その分の余白が必要なのかもしれない。

また、演劇部だった名残で
初めての劇場に来ると、
舞台照明の位置とかスピーカーの位置を確認するのが癖というか趣味なのだが、
やはり他の劇場にはない位置に機材があって、変わった劇場だなと感じた。
客席の上空中央付近に機材が密集しているが、
劇場というより六本木のバーレスク東京の構造などを思い出した。

また、IHIステージアラウンド東京の醍醐味である客席回転を体験した感想だが、
確かに他にはない体験だった。
あ、動いてる!とわかる。
これで酔う人もいるらしい。
確かに長く動いている時は「まだかい」と思わないこともなかったが、
スクリーンを開けて回転してくれる分には私は不快には感じなかった。
しかしディズニーのスペースマウンテンが苦手な人は、
スクリーンを閉じた状態で回転する時に乗り物酔いを感じるかもしれない。
どこへ向かっているか分からない感じがするので。
でも、例えば夏のスイカ割りの時みたいに、始める前、目隠ししてくるくる回転して方向感覚を失わせるのと同様に、
「観客に方向感覚を失わせる」という演出意図がある時は活きるかもしれない。
効きすぎて酔う人も出るかもしれないが…
しかし私としては演劇オタクなので、
演出過剰で、演劇体験によって吐き気を催すなど、視覚・聴覚以外の体の部分が反応するのはコスパがいいような気もする。マゾなのかもしれないが…
それと、演者が歩いているのに進んでいないという光景が面白い。
ただ、今回の演目だからそう感じたのか分からないが、
場面転換の際、
たとえば普通の座席の回転しない劇場で、
暗転中やいったん幕を下ろして大道具を動かす通常の場面転換と、
このステアラで客席を回転させる大掛かりな場面転換に大きな差がないように感じられそこは若干残念でもあった。 
ステアラでやらずに、普通の劇場で暗転して大道具動かすのでよくない?というか。
サブタイトルに万華鏡とあるので、そのことを思えば、整合性は取れているのだが。
また、この村正双騎はこのステアラでやった他の演目と比べて回転が少ない、と言われているらしい。
しかしステアラでの上演はこの機構の特殊さのせいでしょっちゅう上演中止になることはよく知られている。
その点この村正双騎は回転数こそ少ないかもしれないが、現状舞台装置の不具合での休演はまだ起こしておらず、 
私としても舞台の途中で放り出されるくらいなら、回転数が少なくても最後まで見たいと思うので、
休演をできるだけ少なくするために回転数も抑えているのであれば、その点は好意的にとらえたいと思った。

二部では一切回転しなかったが、
先ほど述べた通り、舞台は広く、遠いと感じていた。
しかしミュージカル刀剣乱舞のカンパニーはこういう距離感をブチ壊してくる。
まぁ、客席降りがエグかったというハナシなのだが……
さすがに、あの二振りがこんなに近くまでやってきて「遠い」とか「見えなかった」とかいうフラストレーションだけ抱かされて帰らされることはあまりないのではないかな。
「見えた」し「近くまで来た」。
ステアラがどうであれ、劇場がどうであれ、
物理的な制約を役者の魅力でねじふせるのは、刀ミュカンパニーの得意分野だ。
これは今年の富士急のコニファーフォレストでもそうだったが、
刀剣乱舞のファンであればさすがに演者がここまで近くに来れば大きな文句は出ないであろう。
私としても刀の神様を近くで見させてもらうことで、なんとなく体調が良くなった。
これは決して誇張表現などではない。
良い舞台は万病に効くのだ。 

まとめ


太田基裕とSpiというストイックな役者の作り出す世界感は繊細かつ豊潤であり、
なんかこう、うまく言えないが、すごく透き通った気持ちになった。
物語がわからなかったのに、フラストレーションなどはなく(たぶん理解や解釈がある程度こちらに委ねられていると感じたからかもしれない)
美しいものを見た、
それも、普段見ることができない、珍しい光景を通して、自分だけの、パーソナルな体験をしたように感じられた。
それこそ、美しい万華鏡を覗き込んだ後のような。
そんな夢見心地が残った。
決して安くはないチケット代であったが、
チケット代金を十分に越えた演劇体験ができた。

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