コンサル会社への転職は、誰と働くかが大事なんだ
転職初日、一緒に働くはずだった「元Mキンゼー頭切れる上司」が前日に転職したことを知る。(前回)
うん?私の名前か?
戦略コンサルタント@ヒルズ勤務なんだが、
長いのでヒルズ氏と呼んでくれ。
転職あるある
「いやぁごめんねヒルズ君、伝えるのが遅くなっちゃって」
相変わらず油ギッシュな角刈り氏がにっこり微笑む。
上司になるはずの人物が転職済み。ショッキングではあるが突き詰めても仕方ない。辞めるのは人の自由。私も辞めて来た身だ、人のことは言えない。今思えば、最終面接での元M氏の晴れやかな笑顔は「やっと押し付け先見つけたぁあああ!」って安堵感から来てたんだな。お疲れ様。
それにしても、、
元M氏がいなければこの会社には決めていなかった。大手のAやらBやらDやらでもよかったのだ。それをあえてこの小規模なコンサル会社に決めたのは彼の存在が大きい。
転職したら、いなかった。
あるある過ぎて笑えてくるぞ。
「ということで、私がマネージャー。君の上司だ」
角刈り氏がニッと笑った。
外資系生保営業クラスタ
角刈り氏、マネージャーなのか。
まあ貫禄あるっちゃあるが、、、ギラついた目つき、スーツの趣味、わざとらしい笑顔。どっからどう見ても、外資系生保営業クラスタにしか見えないのだが?
「私は元々、Pデンシャルにいてね」
ほんとに生保営業クラスタやんけ!
どうなってんだこの会社。
「元Mくんは営業弱かったからねぇ。退職して今頃ホッとしてるんじゃないかな、ははは」
確かに、営業チームがいないコンサル会社では案件獲得に向けた営業力も必要だ。しかし修羅の国、外資系生保営業界と比べられても困る。何よりさりげなく元M氏をディスったのが気になる。
さては角刈り、てめぇ、小物だな?
軽く武勇伝がはじまってしまった。既に4分半経過。ムダだ。我々コンサルタントの単価(*)をなめてんのか?新人Boy氏はさっきから"合コンのさしすせそ"しか発していない。気持ちは分かる。
と、ここで日焼けしすぎた肌を持つ通称ギャル氏がわざとらしくあくびをする。彼女もコンサルタント。こういうタイプに限って優秀だったりするから気が抜けない。というかこのタイミングであくびはナイスすぎる。
ギャル氏、いいぞ。
角刈り氏が栄光の過去からようやく我に返る。
「あ、プロジェクトの話しないとね」
ギャル氏、凄くいいぞ。
提案書がない
角刈り氏の説明によると私の業務は某メディアの新規ビジネス支援らしい。
面白そうではある。だが角刈り氏の素晴らしい営業力により契約が結ばれていると主張するわりに、全くプロジェクト設計がされていない。クライアントのプロファイルは渡されたので人間関係は把握したが、肝心の提案書どこ?このゴミみたいなパワポ資料じゃないよな?
「あ、そうそう。最初にやって欲しいのは、提案書のブラッシュアップね」
ああ?
契約締結済みなのに?
「僕が軽く作っておいたけど、もちろんヒルズ君なりに修正を加えてよいからね、任せた!」
契約締結済みプロジェクトの提案書を、今からブラッシュアップ?しかもこのゴミパワポ資料が角刈り氏作成物?
これは大炎上確定案件だ。やんわり断るが、他に案件はないらしい。稼働率(*2)がいきなり低いのもよくない。どうしたものか。
、、、、、、とにかくやってみるか。
ちなみにチームメンバーは私、新人Boy氏、あともう一人は今日休んでいるアナリスト。不安しか感じないメンバー構成だが、仕方ない。
横を向けば新人Boy氏、「某メディアって、テレビ局いけるんですか?芸能人に会えたりして?」芸能人に会ってどうするんだお前?ただの他人だぞ?呆れながら、ごみパワポに集中しようとする。
なぜこの提案書が通ったのかーー。それが恐らく本プロジェクトの一番のキーであり、一番知ると不幸になりそうな部分だ。角刈り氏が自分の実力とのたまっている以上、直接聞くことはできない。どう探るべきか。
頭を抱えていた時だ。
「コツ、コツ、コツ」
会議室のドアをノックする音に顔を上げる。
おお、我らが爆乳総務ではないか。
「あの、ヒルズさん、社長がお呼びです。」
(次へ)
(*)コンサルタントの単価は高く、かつ自分の単価を意識し有効に時間を使えと洗脳をうけているため、時間に異常に厳しい人が一定数いる
(*2)コンサルタントはプロジェクトにアサインされないと”稼働率”がカウントされず休業状態とみなされる。稼働率が高いかどうかは評価にもかかわるし、コンサルタントの人気度バロメーターでもある。
Twitter: @soremaide
サポートは全て執筆中のコーヒーとおやつ代にあてられます。少しでも気に入ってくださった方、執筆者に続編に向けたエネルギーを与えてやってください。