コンサル流、新人歓迎会のやり方
転職初日、角刈りが特徴的な上司、通称角刈り氏からプロジェクト説明をうける私ことヒルズ氏。未完成のゴミ提案書を角刈り氏から渡され、なぜこのプロジェクトが受注されたのか疑問を抱き始める。(前回)
歓迎会はヒルズで
社長が私を呼んでる、、、?何事だ?
「あ、新人Boyさんも一緒にお願いします」
ということは、、、我々新入りに言いたいことがあるのか。爆乳総務に促され社長室に向かう。
社長室の扉をあける。まず目に飛び込むは窓から見える東京タワー。この眺めを社員でなく自分で独占する辺り、彼の哲学が窺い知れるな。
おや、社長室には木村佳乃似の総務、通称由乃氏もいるではないか。
「ヒルズ君、新人Boy君、会社はどうだい?」
どうもこうもねえよ最悪だ!キレかかる気持ちを抑え、はい情熱をもった仲間たちと会え感動しております、など答える。自分でも歯が浮きそうなセリフだが案外相手は喜んだりするものだ。
「そうか!」
喜んだ喜んだ。
新人Boy氏は質問に答えず「頑張ってます!」と何故か自分アピール。こいつ、日本語理解してるのか?
「今夜は歓迎会をしたいと思ってなぁ。今日入社した三名と、私、由乃氏の5名で予約をしようと思っている。空けておいてくれ。」
ありがとうございます!っておいおい、チームメンバーは来ないのに由乃氏は来るだと?
「場所はグランドハイヨットでお願いするよ、由乃さん」
グランドハイヨットの中?
となると和、洋、中、どれだ?個人的にハズレは和だ。個人的な趣味なので無視してくれ、でもな中華、中華来てくれ頼む!
Sタンフォード卒クオリティ
歓迎会はハイヨット和の個室で開催となった。
社長のご指示により、由乃氏と爆乳総務が社長を挟み、新人Boyと私が対面でそのハーレムを眺める地獄絵図。
日系企業には時々「ささ、女性社員は社長の横に!」とのたまうリスク感覚が狂った管理職がいる。だが自ら指示するやつは初めて見たぞ。
爆乳よ、社長との距離を見誤るな、君のそれは思っている以上にスペースを取っている。不要な接触に気をつけろ。新人Boyは前からくる様々な圧に動揺中。いいから落ち着け。
時折静まり返る個室。そりゃそうだ、この図を前には食欲も会話欲も湧かぬ。
沈黙を埋めるように社長の自慢話が始まる。彼はSタンフォード大学院を卒業後、某コンサル会社で経験を積みこの会社を作ったのだとか。品性は感じないが人脈は感じるな。
控えめな爆乳総務がときおり的確なよいしょを挟む。感動したのは、社長のオヤジギャグに全員が凍りついた時「さすが、Sタンフォード出てらっしゃる方は頭の回転が段違いです!」と返した時だろうか。完全に社長の心を掴んだ。
新人Boy氏は相変わらず、流石です知りませんでした凄いですを連発。語彙力に問題があるようだ。
そして、嵐がやって来た。
個室での攻防
突然のことだった。
由乃氏の介入が始まったのだ。
「社長は会社設立当時、日本を代表する起業家であるSMI証券の南頭さんと親交が深かったんですよ」
「「「そうなんですねー」」」
南頭といえばサトシナカモトとマブダチのあいつ?一気に胡散臭くなってきたぞ。しかし由乃氏、なぜ急に口を挟み出したのだ?まるで社長の過去よく知ってますマウントを取るかのように。
はっっっ!
気がついた。
いや、正確には見えたと言った方がいい。
社長の周囲にうずめく紫色の闘気!これは、社長を巡る女の戦い勃発か!?
いや違う、これは由乃氏からの一方的な敵意だ。爆乳総務への嫉妬か、はたまた爆乳そのものへの嫉妬なのか?にしても由乃氏、お前、さては社長のあ、、、あい、、、あいじ、、、
いや、決めつけは良くない。まだ入社してから10時間経過しただけだ。
対するは鉄壁のガードを見せる爆乳総務、由乃氏のマウント連打を軽くかわしている。ただの派遣じゃない、一体何者なんだ?
「ところでヒルズ君、君の案件のことだが」
はい、聞きたいことは山ほどあります。
「カウンターパートナーのプロデューサーは僕の旧友なんだ。彼は今、事業の進め方に悩んでいてねぇ」
おい、角刈り、案件取れたのお前の営業力じゃねーじゃん。社長の人脈じゃん。7時間でバレる嘘つくんじゃねーぞ?
「実は私も仲が良くて、打合せに何度かご一緒してます」
由乃氏!?私特別でしょマウント!?しかしどういうことだ?なぜ総務がコンサル案件の打合せに出席?この話は掘り下げてはいけない警報が私の中で鳴り響く。
だが、あのゴミ提案書で仕事が取れた理由ははっきりわかった。先方とのコネ+社長が何らかの便宜を働いたのだろう。契約取ったはいいがあれじゃ先方の社内が納得しない、作り直せ、そういうことか。
「さて、そろそろお開きにするか!」
決意
財界政界共に人脈の豊富さを披露し満足したのか、そそくさと出口に向かう社長。
お出迎えの社長車に、方向が一緒なので、と乗り込む社長と由乃氏。目を見開く新人Boy氏、にこやかに見送る爆乳総務、無表情の私。長かった転職初日が終わろうとしている。
僕、方向一緒です!とアピールする新人Boy氏を無視してタクシーに乗り込む。爆乳総務は颯爽と地下鉄に直行した。
疲れたな。
それにしてもだ、今日会った社員で一番頭がキレるのは爆乳総務だ。少なくとも角刈りと新人Boyよりは頭が良い。あいつ、まさかあの巨大なあれの中にCPU増設してんじゃないのか?
、、、
やれやれ、何を考えているのやら。それもこれも前職(大手優良企業)と比較しカオスが過ぎるからだ。
ただ、だからこそ、この会社には自分の居場所を感じる。いや、居場所を自ら作る余地を感じられるのだ。
もう少し、この環境に身を置いてみるかーー。
首都高に迫る東京タワーを眺めながら、ブラックの深みに足を踏み入れる決意をするのだった。
- 転職初日編 完 -
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