コンサルが契約内容を変更する時
社長のマイクロマネジメント、副社長の手のひら返し、そしてお嬢氏からの個室ランチお誘いーー。ヒルズ氏の日常は今日も元気よく破壊されている。(前回)
先週末は「日報フォーマット騒動」でつぶれた。日報ごときでどうやって土日が潰れるかって?体験した私もうまく説明できないが、人生で3本指に入る無駄な時間であったことは確かだ。
ま、取り急ぎ、、、第1回定例会行きますか。
◆担当部長たち
「あのね、我々が頼んだわけじゃないんですよ」
ここは某飲料メーカーの応接間。
さすがは大手だ。重厚感あるテーブルに品の良い調度品、窓からは東京の街並みが一望できる。残念なのは、品の良い内装とは程遠い険悪な空気。前に並ぶクライアントの不満顔にため息が出そうになる。
今日は新人Boy氏と、私ことヒルズ氏の二人で出席。クライアント側は部長3名に課長1名、主査が2名。
(だいたい何で部長が一番多いんだよ、、、)
名刺には担当部長とある。
大企業あるあるだが、大抵の"担当部長"は採りすぎたいつぞやの新卒のプライドを守るための張りぼて。かといって全員が無能ではない。無能と有能が同じ“担当部長”に収まるのが厄介な点だ。
「マネジメントだけならコンサルじゃなくていいでしょ。もっといい提案はできないんですかね?」
担当部長の一人が攻撃的な言葉を口にする。頭の両側から角状に髪が爆発しているが、どういうスタイリングなのだろうか。いやその前に、マネジメントを依頼してきたのは御社役員なのだが?
(やれやれ、これだから大手というのは、、、)
◆電撃の自尊心
「お疲れ様ですねー」
運転手・佐藤さんの穏やかな声に癒されながら社用車に乗り込む。
「何なんすか!あの電撃ネットワーグ!」
で?
電撃、、、
ネットワーグ、、、?
あぁ、あの3人組の。そういやいたな頭の両側から、、角状に髪が爆発し、、まて?似てるな確かに?!?、、、ぐ、、ぐふっ、、
噴き出した私に、してやったりの視線を向ける新人Boy氏。彼は彼なりに強かになってきたようだ。
「しかし虚しい打ち合わせだったな」
電撃担当部長をなだめ、契約内容を”若干”変更することを約束し、なんとかおさめた第一回定例会。新人Boy氏が憤慨するのも無理はない。今回の依頼内容が先方役員からの指示であることは、担当部長たちも分かっているはずだ。
が、よくある話。
担当部長たちからしたら”役員から押し付けられた契約の内容を変更させた”という事実が大切なのだ。変更内容はこの際なんだっていい。こちらが少しのめば彼らのプライドは維持され、そして部下たちへの”俺の力どやぁ”アピールもできる。なんという自尊心維持機能か。
(それより副社長、逃げやがって、、、)
◆マイクロマネジメントのわけ
「あ、社長にメール送りますね!」
新人Boy氏がスマホを取り出す。
社長の日報メール騒動に揺れる我が社だが、事態は悪化している。なんと、客先から帰社する際は社長に逐次メールをせねばならなくなった。
何の意味があるかって?
わからん。
この世にはわからんことが多い。
「そういや佐藤さん、社長はどこ行ってるんですか?」
そう、社長は朝からいない。昼過ぎには帰るのでそれまでは社用車を使ってよいとの伝言まで頂戴した。
「私も知らないんですよね」
佐藤さんが微笑むのがバックミラー越しに見える。
「つまり、そういうことです」
佐藤さんの微笑みが狂気の笑顔に変わる。
(( え???? ))
つまり、、、佳乃氏?
いや、彼女は朝からオフィスにいたはず。
「まさか...佳乃3号...?」
弊社には社長の愛人(推定)である佳乃氏、愛人候補の佳乃2号、愛人候補2の佳乃3号が存在している。登場人物がややこしく大変恐縮ではあるが私のせいではないと強調したい。
「佳乃3号...マイクロマネジメント......」
ピンときてしまう。
あいつ、、、社員の行動を把握し自分の悪事を完璧に遂行しようとしている? いやさすがにそれはないか、、、待て、社内には愛人(推定)がいる、これは立派な動機に、、、なりう、、、
衝撃の可能性にゾクゾクしている私に佐藤さんが尋ねる。
「ヒルズさんはこの辺りで降りるんだっけ?」
そう、今日はお嬢氏からのお誘い、個室ランチの日でもあるのだ。
(次へ)
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