コンサルタントの会議は準備が全てだ
コンサル会社への転職初日、グランドハイヨット和の個室にて地獄の歓迎会を終えたヒルズ氏。社長の品のなさ、佳乃氏の社長愛人疑惑等にテンションはだだ下がり。しかし、なぜかカオス感に心惹かれ、暫くこの会社に身をおくことを決意する。(前回)
やあ、みんな。
転職初日編は楽しんでいただけたか?色んなことがあったわけだが、そう、実はまだ転職から1日しか経っていない。恐ろしいことだ。
今日は2日目。本格的にコンサル業務が始まる。おっと、チームミーティングの時間だ。そろそろガラス張りの会議室に移動しよう。
◆矢印という魔法
「おはようございます」
会議室に集まる新人Boy氏に角刈り氏。今日のミーティングは、某メディア企業との次回打合せに向けて。というと聞こえはいいが、社長のコネ受注のゆるゆる危険案件だ。次回は役員クラスが出席予定とのことなので、詳細合意するとしたらこのタイミングしかないのだが、、、
「で、団塊世代ってどこから出てきたんですか?」
角刈り氏の説明に苛立ちを感じ、声をあげる。一応上司なのだが、、、提案書がゴミすぎる。
ん?コンサルの「ゴミ提案書」ってどんなのって?
見分けるコツを教えてやろうか?
矢印だ。
わかってないやつほど矢印で理論をつなげようとする。勿論、サプライチェーンを表すなど矢印必須の資料もあるが、
あるべき姿→課題→戦略
などを矢印でつなげただけの資料は基本的に疑ったほうがいい。よく見ると、なんの関連もないものに線が引かれていたりする。
少し前からビジネスの"図解"が流行っているが、由々しき事態だ。中身のないものを図解しても、さらに中身がなくなるだけだからな。
◆団塊世代に託す未来
さて、角刈り氏の提案書によると「視聴率の低迷」という課題から「団塊世代へのアプローチ」に矢印がひかれている。全然わからん。だいたい団塊世代ってもう65歳超えているぞ。ボリュームゾーンとはいえ、そこに未来を託すのか?
「いやあ、団塊世代は社長の案なんだ。あとは頼むよ」
丸投げかーい。
しかし、社長の案なのか。和の個室ハーレムを思い出すに、社長は金好き女好き権威大好きのバブル世代クラスタ。てことは団塊世代は先方への媚か?たしかに先方社長は団塊世代。新規事業も自分たち旧世代を主役にってこと?メディアの未来、真っ暗だな。
新人Boy氏は提案資料を穴があくほど眺めているが、おい、そこには1ミリの価値もないぞ。「考える技術・書く技術」でも読んどけ。(*)
引き続き頭を抱えていた時だ。
「遅くなってごめんなさーい」
けだるい声に顔をあげる。
◆遅れてきたまとも
サラッサラロングヘアの女性が立っている。戸惑っていると、角刈り氏が紹介を始めた。どうやら昨日休んでいたアナリストらしい。
見るからに質のいいスーツにシンプルな白シャツ、エルメスの鞄。中肉中背の体格には穏やかな、いや眠そうな顔がのっている。時刻は朝10時半。コンサル会社の朝は割とルーズだが、確かに出社には少し遅い。
なんつーか、、、お嬢感全開だな。
「すいません、道が混んでて」
へぇ、家どこなの?
「広尾です(*3)。会社徒歩圏内に引っ越したいんですが、親が反対してて」
お嬢、確定。
「こ、こちらにどうぞ!」
お嬢のふりまく清涼感に新人Boy氏、浮足立つ。爆乳総務よりこっちが好みなのか?
ここでお嬢氏にも打合せの状況を説明。呑み込みがよいところをみると、頭がよさそうだ。お嬢は他の案件も兼務のため、50%稼働らしい(*3)。まともなメンバー登場にほっとする。
急に発言量がふえる新人Boy氏。急に横文字を使いだしたが、何を言いたいのかはわからない。相槌に「アグリー、アグリー」はやばいぞ。
こうして、何ら有益でないチームミーティングが終了した。
明日は社長による資料レビューwith佳乃氏。いやなぜレビューに佳乃氏?って突っ込みは禁句なのだろう。誰も異論の声をあげなかった。
何が起こるのか、、、いやな予感を胸に抱きながら、ごみ提案書を一から作り直す。
ヒルズの夜が更けていく。
(次へ)
(*)「考える技術書く技術」バーバラ・ミント氏によるライティングの基礎が学べる名著。コンサル業界の人間なら必ず一度は手に取る古典。若干読みづらいのと、読んだところで書けるのか、という問題あり
(*2)広尾とは、白金台、恵比寿に隣接し大使館が多く構える東京のハイソサエティ地区。外国人と出会いたい女の子がお茶をしにくることでも有名
(*3)コンサルタントは複数案件を兼務することが多い。その場合は、数字好きのコンサルらしく、どの案件に何%自分の稼働を割くか決定する。
Twitter: @soremaide
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