コンサルタントの恋愛事情
木村佳乃似ばかりが集まる六本木の精神汚染空間クラブMで、社長の歌うSNAPを聴かされるギャル氏&ヒルズ氏のコンサルコンビ。日が変わるとともに解放された二人は、お嬢&新人Boy氏のアナリストコンビが待つすき焼き屋に向かうのであった。(前回)
しゅーしゅーほしぃが流れてるー、、、
おっと、精神がおかしくなっている。
どうも、私の名はヒルズ氏だ。時刻は0時をまわっているが、、、すき焼き、食べに行きますかね。
◆戦友
「それ、無茶苦茶面白いじゃないですか! 」
クラブMでの体験談に、お嬢氏と新人Boy氏がゲラゲラ笑いだす。既に酔っているのか、横には空になった赤ワインのボトル。
いいなぁ、、、
「あの木村佳乃軍団、絶対に全員整形させられてるよ」
吐き捨てるように言いながら、ギャル氏がトマトすき焼き鍋を注文。普通のがいい、なんてケチをつける気力もない。
先に頼んでおいたスパークリングワインがほどなく到着。ギャル氏と乾杯。クラブM強制召喚で一つだけ得たものがあったとすると、ギャル氏との間にできた奇妙な連帯感、いや戦友感だろう。
ギャル氏、実は新婚らしい。
夫は某商社企業勤務。しかし今日は既に朝までコースと連絡済みらしく「とにかく私は飲む」と気合十分だ。まだ火曜なのだが元気だな。
しばしプロジェクトの話をする。
彼女は、我らがマネージャー角刈り氏が押し付けられたメディカルプロジェクトの実質的リーダー。メディアにメディカルーー。語呂は近いが中身は全く異なる案件が、なぜ角刈り氏の下に入ったのだろうか。
「全て元Mさんのおかげだよ」
そもそも元M氏のチームはメディカル専門だったらしい。私も憧れた切れ者の元M氏、新薬開発に関わる社会的意義の高い案件を動かしていたが、そこに社長案件のメディア系プロジェクトが乱入。あれもこれもと押し付けられる中で嫌気がさし、遂に退職してしまったらしい。
「突然いなくなったような辞め方だったからね」
メディカル系はコンサル案件の中でも専門性が高い。ギャル氏、苦労しただろう。そこに角刈り氏が上司ときては、飲みたくもなるよな。
戦友よ。もう一度、乾杯だ!
◆合コン必須スキル
ひたすら飲む我々の横で、すっかり打ち解けた新人Boy氏とお嬢氏が楽しい会話に花を咲かせている。
「お嬢氏さんは黒石麻衣似ですよね!」
「えぇー!そんなことないですよー」
はー、、、平和だなぁ。
「僕ね、合コンなら絶対の自信があるんでっす!」ろれつの怪しい新人Boy氏の語りが始まった。
新人Boy氏の趣味は合コン。趣味どころか、合コンパーティーの運営メンバーをしているらしい。どういう人が人気なの?と話を振ったところ意気揚々と語りだした。
やっぱりね、男は年収が大切、あとは清潔感! 話が面白いってのも大事なんですが、自分で自分を面白いって言う人ほど滑ってるんですよねーこれわかってくれます!? あ、でも一番大事なのは空気読む力! これは男女ともに必須能力ですよね!
質問したものの、ぶっちゃけどうでもいいんだが、、、社長との対話でもこのくらい流暢に話してほしいものだ。
調子に乗る新人Boy氏、女性足りないんでよかったら来ませんか?とお嬢氏を誘うが反応はゼロ。同僚が運営する合コンパーティーに参加なんて絶対嫌だろう。空気読めよ、新人Boy。
「えぇー合コンいかないんですかー!」
空気読めないやつの話はもういい、
早くトマトすき焼き来てくれ。
願っていた時だ。
「んー、合コンって言っていいのかわからないけど」
首をひねりながらお嬢氏が話し始める。
◆お嬢スタイル
最近、友人に紹介された男性と一対一のランチに行ったんです。ちょっとは仲良くなれたかな。
それ詳しく!ギャル氏がワクワクし出す。
「時々ご飯行くくらいの友達ですよー」
ど、ど、どんな人なんですか?どこで最初ランチしたんですか?どの店!?新人Boy氏が矢継ぎ早に質問する。
トマトすき焼きがようやく運ばれてきた。
何も食べていなかった我々コンサルタント二人、黙々と口に運ぶ。
う、うまい! すき焼きと言っていいかはともかく、トマトとニンニク、オリーブオイル、そしてすきやき肉のハーモニー、ああ、、、シャバは最高だ。
ぼ、僕、合コンパーティー会場の参考にしたいので、教えてください!
「えー、、、アクセス悪いですよ」
しつこく質問を続ける新人Boy氏。
さてはお前、恋に落ちたのか。
場所聞き出して、そこよりいい場所選んでデートに誘おう、そういう魂胆だろう。その意欲をなぜ仕事につかえな、、、
「でも、シンガポールですよ」
ヒュィ。
新人Boy氏の呼吸が止まった。
友人の紹介でメール交換したんですけど、
会えたらいいですねって言ってみたら、
なんか航空券が送られてきちゃって。
乗ったら添乗員からお手紙まで渡されて、ちょっと恥ずかしかったですね。
にこりと微笑みながらお嬢氏がデザートの抹茶ティラミスを口に運ぶ。
酸素が足りず口をパクパクさせる新人Boy氏。恋から鯉になったよう、、、おっと社長のおやじギャグが移ってしまったいかんいかん。ギャル氏はすっかり会話に興味がなくなったのか、機械のように肉と酒を口に運んでいる。うまいよなこれ、わかるよ。
こうして、新人Boy氏の儚い恋が終わった。
◆栄光の残骸
「さすがに眠いねぇ」
外に出たのは既に深夜2時半。あくびをしながらギャル氏がタクシーを止めに行く。
「あ、あれ、ヒルズさん、、、あれって」
酔っ払いのお嬢氏が急にシラフ声になった。
全員が指さす方を見る。
酔いつぶれた会社員が六本木の交差点を渡っている。なんか見たことあるよな、うん、あの特徴的な髪形、いうならまぁ、”角刈り”なのかな。
「「「 、、、、、、 」」」
あ、あの、じゃあ私先に乗りますね。
ええ、お疲れさまでーす。
また明日!
こうして、クライアント初打合せ(+長い夜)は幕を下ろしたのであった。
- クライアント初打合せ編 完 -
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