どんな相手でも引き出す、それがコンサルの質問力
コンサル会社への転職から、1か月がたったヒルズ氏。広告代理店の出す「アイドルとの蕎麦打ち温泉企画」案にストレスを感じながらも、プロジェクトを順調にこなしていた。そんなヒルズ氏たちの前に突然現れた木村佳乃似の女性。物語がまた、動き出そうとしている。(前回)
諸君、念のため断っておくが、私は女優の木村佳乃さんに何の恨みもない。それどころかタイプど真ん中だ。木村佳乃似が社内に2人もいるなんて本来この上ない幸せなんだが、まぁ、なんというか、、、本題に入るか。
◆2号の肩書き
「今日からインターンに来てもらったんだ、メディアチームは彼女をよろしく頼むよ」
東京タワーをバックに笑顔を浮かべる社長、右手に立つ木村佳乃2号。
「「「 は、はあ、、、 」」」
困惑の念を送る我々。
社長の紹介によると、彼女はオズカー所属のモデルなのだとか。
見るからに若い。23‐24歳くらいだろうか。
なぜ来ることになったのか、、、
「彼女はね、ミスユニバース日本選考のセミファイナル候補者なんだ」
"ミスユニバース日本選考セミファイナル候補者"
び、、、
びび、、、、
微妙、、、、、
凄いのかどうか、全く分からんぞ。
「しかも彼女はね、パソコンスキルが素晴らしいんだ」
使えるだろ?と自慢げな社長。
「「「 は、はあ、、、 」」」
再度、困惑の念を送る我々。
未だ届かぬ思い。
「そろそろお昼だね、歓迎会を兼ねたランチはどうだい?」
かしこまりました、って、私が入社した時はチームでの歓迎会などなかったんだが、、、新人歓迎会の惨状をちらりと思い出す。
しかし今、我々が気にすべきはそこじゃない。
((( 1号、大丈夫か、、、?)))
◆試練の間
社内に流れる不穏な空気と、さすがに心配そうな角刈り氏 (上司) を振り切り、歓迎ランチへと出かける。
徒歩数分の場所にあるレストランなのだが、
「日傘忘れてきちゃったぁー」
の一言でタクシーに変更。もう季節は9月も末なのだが、ここはお客様扱いする方が無難だろう。
ほどなく "ニューヨーク風" レストランに到着。
いつも思うのだが、"クールでラグジュアリーなニューヨーク風"、とか、"ニューヨークらしく昼からシャンパンで"、とか書いてて恥ずかしくならないのか。レストラン・文化輸入専門のコンサル会社があるので彼らが手掛けているのだろうが、こと東京は見境がなさ過ぎて辟易と、、、
「きゃー♡オシャレなレストラン♡」
前言撤回。
2号が喜んでいるので良しとしよう。
お嬢と新人Boy氏はブリオッシュトーストを注文、佳乃2号はコブサラダ、そして私はオムレツを注文。
「承知しました!」
元気よく店員が答え、厨房に歩いていく。
どこに住んでいますか? あー世田谷、田園都市線は混みますよねー、私も以前住んでいたことがあって、えぇ、えぇ、そうなんです。
しばし他愛もない話を繰り広げ、
そして、魔の時間がやってくる。
「「「、、、、、、」」」
話すことが、ない。
注文してから料理が来るまでの時間、
私はこれを試練の間と呼んでいる。
客であれば、試練の間を埋めるのもコンサルスキルの見せ所!と必死にネタを仕込むのだが、由乃2号にそこまでのモチベーションは湧かぬ。
クラブMご出身ですか?
社長とのご関係は?
てか、お前だれ?
聞きたいけど、聞けなくて、夏ーー。
手持ち無沙汰な全員が、何となく斜め上空を見つめている。ゆっくりと周るファン。店内に流れるテイラー・スウィフトの声がやたら大きく聞こえる。
◆六本木ランウェイ
仕方あるまい、、、ここはコンサルタントとして質問力を発揮しよう。
「モデルのお仕事って、どんなことするんですか?」
ネタを投げる。
「えっとぉー、時々するくらいなんですけどぉ」
目を輝かせる2号。
よし、無事に着弾した。
「バッグの持ち方とかあるんですよぉ、こういう感じでぇ」
ポーズを決める佳乃2号。
体に斜めの線を作るのが鉄則らしい。
「「「へぇーーーーーーー」」」
他にどんなポーズがあるんですか?
服によってポーズ変わるんですか?
フォロー質問をお嬢が畳みかける。
レストランで様々なポーズをキメてご機嫌な2号。
ここで負けじと新人Boy氏が会話にIN!
「歩き方も練習するんですよね?」
お嬢のスパルタ教育を受けた新人Boy氏、渾身の質問を投げる。
ガタッ!
突然立ち上がる由乃2号
厨房の方角へ歩き出す由乃2号
髪をなびかせ振り返る由乃2号!!!
「こんな、感じです♡」
カッカッカッカッカッカッ!
向こうから真顔でランウェイを、いやレストランの狭い通路を歩き出す由乃2号ぅぉおおおおおーーーー!
「「「 す、、、凄いですぅー! 」」」
拍手喝采の我々。
ドン引きしているその他レストラン利用客達。我々は今、喜び組もびっくりの笑顔を見せているのだろう。
新人Boy、お前、凄いもの引き出したな、、、
感心していた時、ようやく料理が届いたのだった。
「楽しかったですね!」
「えぇ、そうですねー、、、」
すっかりご機嫌の由乃2号と、疲れ気味の我々。
とはいえ、2号歓迎会はなんとかなった。あとはインターンとして何をやらせるかだ。パソコンスキルがあるとか言ってたから、簡単なリサーチでも任せるかーー。
思いを巡らせていた私は、その頃社内で発生していた事件など、知る由もなかったのだ。
(次へ)
Twitter: @soremaide
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