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コンサルタントは役員クラスとの打合せをどう始めるか

某メディア企業との打合せが迫る中、ヒルズ氏は徹夜で仕上げた提案書を社長に提出。社長からは、まさかのポスター印刷で先方に提出するよう指示がでるのであった。(前回


入社から一週間が経った。

一番時間を費やしたのはポスター印刷だろうか?なぜ、中身を確認してから印刷させないのか。レビュー終了後、思いついたように社長からコメントが飛んだ。結局5回の修正を繰り返し、即ち5回のポスター印刷を経て、ようやく資料が完成。

何はともあれ、今日は先方役員との初打合せだ。気合をいれていくぞ。

◆突然の交代

「打合せは、私、角刈り氏、お嬢氏、あとヒルズ君で行こう」

社長の指示により、打合せ出席者が決定する(*)。

外れた新人Boy氏は、先に電車でポスター輸送のみを実施。可哀そうかと思いきや、本人はテンションが上がっている。テレビ局にいけること自体が嬉しいらしい。

「あと、今日のプレゼンはヒルズ君からな」

は?

どういうことだ? ここはマネージャーの角刈り氏がすべきでは? ちらりと角刈り氏を見ると、彼もまたぽかんとしている。横で笑いを堪えるお嬢。

確かに、この一週間を見ていれば提案書を作ったのが私であることは社長にも明らかだろう。しかし、このタイミングで言うか?

一番使えない新人Boy氏を輸送要員に回したことからも、社長は意外と人のことを見ている。そして情けはかけない、ということか。

チーム内に微妙な空気が流れているが、仕方ない。急いでプレゼンのイメトレをし、タクシーに向かう。

◆大和撫子の機能

某メディア企業の入り口に降り立つ。先に到着していた新人Boy氏がうやうやしくポスターを手渡す。本当にこれ、使うのか、、、

げんなりしている我々のもとに社用車が到着。社長だ。

中に入ると受付が立ち上がり一礼する。

いつも思うが、なぜ日本企業は受付にいかにも弱そうな大和撫子系を配備するのだろうか。接客能力が、など言うやつもいるが、セキュリティを考えれば屈強な人間の方が適している。

ぶつぶつと考えている間に、お嬢氏が受付をしようと前にでる。

その時だ。

「〇〇役員との打合せだ、連絡してくれ」

社長、妙に上から目線で前へ。
あー、いるよなー、店員や受付に急に高圧的になる奴。大和撫子系受付はこういう奴の自尊心を満たす機能も果たしているのか。

「かしこまりました」

丁重に扱われ社長はご満悦。お嬢氏、にこやかな笑顔を保ってはいるが、饒舌な眼差しが「くっそきめぇな」と語っている。いかんいかん、打ち合わせを前にして既にテンション下がり気味ではないか。

不穏さしかない空気と共に、役員用エレベーターに乗り込む。

◆不明瞭な会話

「こちらでございます」

さすが役員用会議室、窓からは東京の街並みが一望できる。

先方役員はお歳を召している。パソコンでメモを取るのを嫌うだろう、ということで角刈り氏、お嬢氏がA4ノートを取り出す。会社配布とはいえ、コンサルタントのA4ノート好きは異常だ(*2)。

足音が聞こえてくる。
一斉に立ち上がる我々。

「どうも、どうも」

先方役員のお出ましだ。全身から出る狸感に警戒。この狸役員と総務佳乃氏の間に何の繋がりがあるのかーー。

「いやあ、先日はどうも」

「いやあ、こちらこそ、あっはっは」

「また、よろしくお願いします、はっはっは」

「「うっはっはっは」」

なんだこの会話。主語も目的語も不明瞭すぎてゲスい想像しか浮かばない。高級風俗の手配でもしたのか、はたまた愛人斡旋か、佳乃氏の役割はいったい何なのか、これから始まるプレゼンに全く意識が向かないぞ。

新入りということで、私だけ簡単な自己紹介と名刺交換をする。


「ではヒルズ君、始めてくれ」


地獄のプレゼンが、今幕をあける。

次へ

(*)役員クラス以上との打合せが多いコンサル会社では、日本にある企業にしては出席者を絞る傾向がある。今回は4名だが、これでも多いくらいだ。

(*2)急にフレームワークという名の図を描きだしたりするからか、コンサルのA4ノート使用率は異常に高い。ノートの取り方指南もあるにはあるが実際は自由。横向きにノートを使うコンサルタントも少なくない。

Twitter: @soremaide

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