コンサルが上司を個室に呼び出す時
交わされた契約を知らぬ存ぜぬとつっぱねる電撃担当部長。契約内容を微妙に変更することで場をおさめ、お嬢氏とのランチに向かうヒルズ氏であった。(前回)
お嬢氏との二人きりランチ。最近でいうと"濃厚接触"に分類される行為だが読者諸君はドキドキしているか? 私? まぁSlightlyドキドキしてるね、無駄な横文字混ぜちゃうくらいには。
◆浮かれた心は地下へ
「いいなー!後で話聞かせてくださいよ!」
社用車から新人Boy氏が叫ぶ。
ここは霞が関のはずれ、指定されたしゃぶしゃぶ店に向かう。「ヒューヒュー!」と古臭くはやし立てる新人Boyの雰囲気にのまれ私も少し浮足立っていた。だが店につき、地下への階段を降りる頃、そんな気持ちはいずこへやら。
性別やら外見やらを排除し考えてみてくれ。
部下が個室に上司を呼び出すとき、それは99%よくない話だ。つまりこれから聞く話は99%よくない。
「退職したい、かな」
カリフォルニアでの社長セクハラ未遂事件を思い出す。あんな無駄な労力を使う企業に居続けたいだろうか?
否。
「はぁ、、、」
どう引き留めるか、いやまずは傾聴だな、コンサルたるもの余計なことは言わずマニュアル通り(*)会社に非がなかったかを確認し、って確実に非があるんだがどうし、、、、ひっ!???!
思いを巡らす私の前に、殺気の塊が現れた。
◆密会は慎重に
「お疲れ様です」
ダブルの紺ジャケットにパンツスタイル、すっきりまとめた髪にパールのピアス、穏やかすぎる笑みを浮かべるお嬢氏。
むっちゃくちゃキレてるな...?
「お、お疲れ様」
どうぞどうぞ中へ、、、
上座にお座りくださいませ、、、
個室に入り、即座にしゃぶしゃぶランチ×2を注文。重苦しい空気に耐え切れず、机に置かれた調味料を手に取る。あーこの柚子胡椒は大分県から取り寄せてるんだなぁ、、、興味ないけどなぁ、、、
「あ、飲み物も頼めばよかったね」
間を埋めるようと空虚な会話をつなぐ私に、猛スピード変化球が投げつけられた。
「ヒルズさん、怒っているんですか?」
◆シンクロ率100%
へ?
お、怒って、、、いる?
いや、君が怒っているのはわかるのだが???
「やっぱり、、、」
きょとんとする私に、お嬢氏が続ける。
人づてに聞いたんです、ヒルズさんが私のことを「調子のっている」って言ってるって。
ふぁ!?
そ、そんな恐ろしいことを言うわけが、、、私はまだ東京湾に沈みたくないのだ!断じてないっ!
「いやぁ私も嘘かなとは思ったのですが」
あと、メディア企業との湯けむり案件が継続契約にならなかったですよね?あれも私のせいだって。確かに温泉で大乱闘を発生させたのは私かもしれません。が、それを言うなら
「「 佳乃2号のせい 」」
ですよねぇぇぇぇー!!!
よかった、、、シンクロにより殺気が引きかけている、、、おっとしゃぶしゃぶも到着、こりゃいい流れだ、ってこんなことで呼び出されたのか?まぁ別にいいんだが、、、
ほっとする私にお嬢氏が告げる。
「恐らく発信源は、副社長です」
(次へ)
(*) よい子のみんな?退職を考える部下に裏切り者など言ってないだろうな?コンサル界隈は人材流動性が高く出戻りも可能な企業が多いため、円満退社は双方にメリットがある。辞めた部下が、未来の上司になることだってあるのだ。