爆乳と意識高い系とコンサルタント
コンサル会社に転職した初日、少しばかり理解を超えたヘルメット&段ボールのお出迎えをうけることになった前回。
しかしここは気を取り直そうじゃないか。
転職して最初にやること、それはこれから仲間になる皆への挨拶。大切なファーストインプレッションを作る時が来た。気合を入れていこう。
ガラス張りの社内
「さて、そろそろご挨拶をお願いできますか?」美人総務の佳乃氏に促され、皆の前に立つ。
背筋を伸ばし、前を見、、、
お?なんだ?目が痛いぞ。
空気が、悪すぎる。
物理的な話ではない。なにせ至る所に空気清浄機があるのだ。もはや何かの強迫観念を持っているのかと疑うほどに空気清浄機が置いてある。物理的に空気が悪いはずがない。
雰囲気が、死んでいる。
死んだ魚のような目とぎらつく目、そこに反笑いでスクリーンを眺める目が入り混じる。時おり空気清浄機のヒューヒューという音がまた不気味さをプラスしている。ちなみに社内の会議室は多くがガラス張り、社長室、副社長室も半透明のガラスという極めて風通しがよさそうなオフィスなのだが、風通しがよくとも死んだ空気が流れ込むだけだ。
そういえば、面接の時は日中で人が少なかったんだよな。完全にガラスに騙された。
耐え切れず、横を見る。
遮られる視界
同日入社は私を入れて3名。さみだれ式に人が出入りするコンサル会社で同日入社がいるのは珍しい。私の隣には総務として入社する女性、その女性を挟んでアナリストの男性が並ぶ。
アナリストはいかにも初々しい新人Boy。社会に出て2年くらいって感じか?
しかし視界が悪いな。
なぜか。
横の総務新人女子のせいだ。とにかく胸がでかい。何を食べてそうなったのかしらないが新人Boyを見ようとすると爆乳を凝視することになる。一体どういう構造をしているのだ。
仕方ない、目は痛いが前を向こう。せっかくの同日入社仲間に不愉快な思いをさせてはいけない。
同日入社は、誕生日が同じクラスメイト以上のつながりだ。
時々、「クラスメイトの〇〇君と誕生日が同じだったの!運命!」なんてお花畑なやつがいるが、そういう人はコンサルタントに向いていない。誕生日が同じクラスメイトはよほどの過疎地でもない限り約10%の確率でいる。大して珍しくもないのだ。確率を正しくとらえる能力はコンサルタントの基礎。12星座占い読んでるやつとは関わりたくもない。。。いや、人生はその方が豊かかもしれない、過激なことを思うのはよくないな。
そんな思いを巡らしているうちに、新人Boyの挨拶が始まる。
「コンサルタントとしてここで皆さんと働けること、とても楽しみにしていました!よろしくお願いします!!!」
元気いっぱいすぎるぞ、大丈夫か?
しかもコンサルタントとしてってお前、まだアナリストだぞ?
(注:コンサル界は能力により呼び名が変わる階級社会)
コンサルへの憧れ、純粋さ、意識の高さを検知。
不安がよぎる。
こういうタイプはだいたい真っ先につぶれる。
続いて爆乳総務の挨拶。
胸に似合わぬ控えめな挨拶だった。派遣業が長い雰囲気だな。こういう人は勘がよく仕事ができる、仲よくしよう。
見習って私も手短かに挨拶。重苦しい空気と半笑いの社員の顔は気になるが、ひとまず入社挨拶という儀式を終えた。挨拶だけでこんなに疲れるとは、これがコンサル会社か。いやコンサル会社らしさは今のところあまり感じていない。そうだな、感じているのは、狂気のみ。
上司との対面
お次の通過儀礼はチームメンバーとのご対面だ。最初のプロジェクトで上司となる人物は面接時にお会いして知っている。元Mキンゼーの超絶頭の切れる方だった。ああいう人、いるんだよな世の中には。前職でお世話になったコンサルタントも相当に頭が切れる方だったが、元M氏はそれ以上だ。
チームメンバーらしき方々に手招きされ、会議室に入る。新人Boyもついてくる。同じチームなのか。まあいい、元Mがいるなら安心だ。
会議室の奥に座っていた角刈り油ギッシュ男性が「入社おめでとう!」と、白い歯を見せて笑う。
「あ、ありがとうございます」
さっき君は自己紹介終わってるから今度は私が自己紹介する番かな?と微笑む角刈り氏。ええお願いしますと微笑む私。いやまてその前にこいつ誰?
「あ、えーっと、元Mさんは今日は外出中ですか?」
下を向いていたギャルみたいな女が爆笑しだす。この人もチームメンバーか。恐らくサーフィンが趣味なのだろう、肌が焼けすぎている。
笑い続けるギャル氏をまぁまぁ、となだめる角刈り。
微笑みを保ったまま、こちらを向く。
「元Mさんね、昨日辞めたよ」
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Twitter: @soremaide