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『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む』からの『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』

ナツミと申します。
某海外ドラマと原作本の比較をするというブログをそこそこの期間運営しています。ありがたくもそこで様々な方に出会えたのですが、ブログの性質上「本が好きな人」と思われがちです。

確かに、書店や図書館に行くと興奮による便意を催してしまう程度に本好きではあるのですが、ブログをご覧いただければわかるように、学識はまったくありません。敷居の低さだけが売りのブログです。
それでも、ブログのせいでしょっちゅう「おすすめの本は?」「今読んでいる本は?」と聞かれてしまい、その度にあさましくも「どう答えたら賢そうに見えるだろうか……」と悩んでしまいます。
「好きな音楽」も困りますね。なんて答えたら、ダサくも若ぶってもない丁度いいクール感を演出できるんでしょうね。

ついさっき、非公開でただただ壁打ちの日記をつけていたnote
のAIが話しかけてきました※。「読んだ本の記録を公開しましょう」

(※noteをやっていない方へ。noteはこちらが何かするたびに何かしらコメントを寄越します。イマジナリーフレンドではないのでご安心ください)

そうか、生で聞かれてキョドる前に書面で公開しちゃえばいいんだな……!あんまり恥ずかしくないヤツを……!

というわけで、もはや19世紀と21世紀「初頭」の世界に籠もる孤独な戦いと成り果てたブログ作業からたま~に顔を出して、違う本のことを書いてみようと思いました。
読書感想文をひたすら壁打ちするのでもいいのですが、いとあさましいので、どうせ公開するならできれば思われたいんです、「その本面白いよね!」とか、「私も読んでみました!」とか。
であれば、オススメする方向か?

本に限らず、何かを人様にオススメするなら、なるべくその人の「好きなもの」を押さえて、そこからつながるものを選んだほうが良いと思われます。「それをお好きなら、あれもお好きじゃないですか?」という芋づる形式で、読んだ本や好きなものをご紹介してみようと思います。

まず、かまど・みくのしん著『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む』。

天下の大人気webメディア『オモコロ』、筆頭記事の書籍化。
つい最近のヒット作なので、チェックなさった方も多いと思いますが、ごめんなさい、私は記事だけ追ってて、まだ本は買ってません!絶対甥っ子たちに読ませたいので、これから買います。
私と同じくビッグウェーブに乗り遅れた方は、とりあえず『オモコロ』の記事をご一読ください。無料ですよ。

もう、素晴らしいですよね……!
長いから一度に読めとは言いませんが、先日発表された『山月記』編もめちゃくちゃ良いので、ぜひ……!

みくのしんさんの感性の瑞々しさに心を持っていかれがちなんですが、かまどさんのツッコミと観察眼の冴えがすごい。シャーロック・ホームズが相棒ワトスンを「光を導く存在」と称し、彼なしでは輝けなかったように、この企画におけるかまどさんの功績は大きいと思います。

もうひとつ出色なのは、「作品と向き合うスピード」。
先日、仕事でブラジルの心理学者のお話をうかがったのですが、あちらでは「50代はfacebook、40代はX(Twitter)、30代はInstagram、20代はTick Tock」というのがSNSの棲み分け、とおっしゃってました。(通訳さんが入ってたので聞き違えたかもだけど、10代はなんかもうよくわかんないやつを言われたよ……!)
こまかい真偽はともかくとして、下の世代になるほど「長さ」を忌避しているのがわかります。YouTubeの長さに子供はすでに耐えられない、というのが彼女の見解です。ブログなんかもう化石じゃん。

長文も書けないこんな世の中で!(ポイズン)
一文単位、下手すると単語単位で、地を這うように進んだり、止まったり、戻ったりしながら『走れメロス』を味わうみくのしんさんとかまどさんの読書が、こんなに楽しいなんて。
読書の新しい可能性を、いや、下手すると、スピードアップの限界にたどり着いてしまった若者文化の転換点を見せてくれてしまったかもしれない、名作です。(ここまで褒めちぎってしまったからには、早くお金出して買わないとな……)

そして、『本を読んだことがない~』をお気に入りの方におすすめしたいのが、こちらの本。

大河ドラマ『光る君へ』でのファーストサマーウイカ様の好演で、今やネット民にたいへん親しみ深い「清少納言ネキ」
この本は、日本語タイトル通り、清少納言に惚れ込むあまり長期休暇制度(フィンランドにはそういうんがあるらしい)をとって京都に来てしまった女性編集者の一年間の記録です。

やり甲斐を感じられない仕事のストレスや、恋愛や結婚をしなくて良いのかという不安から一歩踏み出した彼女の生き方を綴ったこの本は、2021年の出版以来、多くの女性を励ましたそうです。
……すみません、ひとつ前の文。
棒読み感満載で、すげえつまんねえ本みたいに書いちゃったんですけど、ここでタブを閉じないで、サムネの帯に注目していただきたい。

「セイ、あなたと私は驚くほど似ている」

……そんな、「ねえナナ」みたいに清少納言を呼ぶ人、初めてみたよ!!と衝撃を受けた皆さん、安心してください。ずっとこの調子です。
奨学金ゲットで1年も清少納言研究なんて、さぞかしインテリなんだろうな、とか、華やかな天才に自分を重ねたうっとり文章を読まされるのかな、とか色々構えちゃうかもしれませんが、ミアさん、全然自分を飾らない。
8月に京都に来たのはいいけど暑すぎて、涼しくなるまでひたすら寝てたり、モラトリアムツーリスト仲間と飲んでばっかりだったり。東日本大震災が起これば、まああの時確かに皆そうだったけれども、プーケットに逃げちゃうし。第一せっかく日本に来たのに、日本語わかんないから英語の文献しか読めないんですよこの人は。
ねえミア、もうちょっと取り繕ってもいいのよ。

……なのに、すごく面白いんです。ほとんど何も知らないミアさんの視点で旅する日本が。ミアさんが語りかけ、追い続ける「セイ」の言葉としての『枕草子』が。
決してコミュ強とは言えず、危なっかしいミアさんを「おいおい……」と見守っているうちに、彼女の感性にぐっとねじ伏せられる。(初めて○○○を観るシーンの表現は圧巻!)一冊読み終わる頃には、本当に「一歩踏み出す勇気」をもらえていると思います。
そこに推しがいるなら、千年前の人だとか、言葉ができないとか、気にせずにいきなり押しかけてもいいじゃん!と思える……かもしれない。

私たちは、「人の読書」によって新たな世界に連れて行ってもらえる。
読み古した本でも、何度でも。
それは皆さん、様々な書評や読書会、またweb上の交流などを経てとっくにご存知だと思うのですが、「はじめはこちらがリードしているはずだったのに、知らぬうちに遠いところまでさらわれてしまう」2冊を選んでみました。

それにしてもミアさん、『光る君へ』観てますよね多分……
ミア、ウイカの「セイ」はあなた的にアリだった?ムラサキの印象は変わらない?今わたしは、猛烈にあなたと光君について話したいと思っている。
とりあえず、Xであなたのアカウントを探してみるね。フィンランド語は読めないけれど。

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