第4世代飛行機のスゲーところ
プロシージャトレーニングが終わりました。
ここからいよいよシミュレータに入りますが、今回ATRのプロシージャトレーニングをやってみて気が付いたことがいくつかあるので、ちょっとまとめておきたいと思います。
第4世代のATRと第3世代のダッシュ8
私が今、操縦資格を取ろうとしているのはATRの中でも600シリーズなる最新型で、ヨーロッパ製ということもあってエアバスA320やA380と近い設計思想を持っています。
コクピットには液晶画面がずらりと並び、様々な情報がデジタル処理され、画面に映像として表示されます。このようにデジタル化が進んだ飛行機を第4世代と呼ぶ*そうです。
ATRのコクピット
これに対し、私が今まで乗っていたダッシュ8は第3世代と呼ばれ、入力情報のデジタル化が第4世代ほど徹底されていません。センサーで捉えた外界の情報や、ナビゲーション情報、各システムの異常検知などデジタル処理される部分もたくさんありますが、それらは別々のコンピュータで処理されるだけで、情報を統合的に処理してコクピットの液晶画面に映し出す機能はありません。
ダッシュ8のコクピット
第4世代のスゲーところ:性能計算
さて、ここで第3世代の飛行機から第4世代の飛行機へ移るパイロットの視点からみた両者の違いを考えてみます。
それが、先にも述べた性能計算と緊急時の故障診断です。
*この世代分けはもともとジェット機に適用されていて、第4世代はフライバイワイヤ(FBW)がその特徴となっていますが、ATRはFBWではありません。今回は私がターボプロップにこれを準用しているのでFBWではないところに注目しています。
第3世代の飛行機は、離着陸時の性能計算をパイロットが行います。会社が準備した性能計算用のマニュアルを使って、離陸重量や利用するパワーやスピード(V1とかV2とかいうあれです)を読み取り、カードにマジックでスピードを記入、スピードメーターにバグと呼ばれる目印をうちます。
結構マニュアルなんです。
また、離陸に必要なパワーも同じように表から読み取り、パイロットが手でレバーを操作してターゲットに合わせます。タービンエンジンは出力の立ち上がりにラグがあるので、狙った値にぴったり合わせるのは結構難しいことに加え、まっすぐ走るために外も見なければなりません。
同じところにレバー合わせても、エンジンのヘタリ具合によって微妙に結果が異なるので、ターゲットにセットしたら左右のレバーがちょっとズレてる、なんてことはよくあります。わりと職人技です。
これに対し、第4世代の飛行機は、コンピュータで性能計算をするので、その日の気温や滑走路の状態、重量を入力すればその条件でのピンポイントの速度が算出されます。ちなみに、速度計はデジタル画面の左側にあります。
そして、それらの値は飛行機のセントラルコンピュータに送られ、デジタル画面に「バグ」をうってくれます。バグは複数あって、フライトの段階や状況に応じて自動的に色分けされ、そのときに必要なスピードが、自動的に表示されたり、消えたりします。すごいですね。
パワー制御も簡単で、パイロットは「ノッチ」と呼ばれる溝にパワーレバーを合わせるだけで、パワーマネジメントシステムとオートパイロットが自動的にターゲットに合わせてくれます。もうニンニンいいながらパワーの微調整をする必要がないわけです。
まさにオートマ!
ただし「オートスロットル」ではないので、完全自動ではありません。速度が自動になるのは上昇とクルーズだけで、降下を開始してからは速度はレバー位置によるマニュアル操縦になります。オートスロットルがつくと、ゴーアラウンドでもオートパイロットが使えるようになります。うちの会社のATRにはオートスロットルはありませんが、つけるオプションはあるようです。
第4世代のスゲーところ:故障診断
もうひとつは、飛行機自身が故障診断と解決方法を提示してくることです。
第3世代の飛行機も、コンピュータ化が進んでいますが、それぞれのコンピュータが担当する情報を統合的に処理するセントラルコンピュータを持ちません。ですから、何か異常が発生したら、それを担当するコンピュータがセンサー異常を検知して信号を送りますが、その信号の送り先は警告灯の電球です。
ダッシュ8の警告灯パネル
これらの黄色や赤のライトがついたら、それをパイロットが「判読」してQRHと呼ばれる本を開き、そこに書かれている対策をひとつひとつ実行していきます。
例えばエンジン故障であれば赤い警告灯が点くわけですが、それがエンジン本体が壊れたのかプロペラの角度調整が壊れたのか、火災が起きているのかは、パイロットが警告灯とあわせて計器から状況証拠を集めて判断することになります。ですから、確実にやらないと故障診断を間違えることもあります。
これに対し、第4世代の飛行機は、ローカルからの信号を検知したセントラルコンピュータが、警告を判読、何が起きているのかを理解して、QRHに書いてある対策を、コクピットの真ん中にある画面に表示します。
これは言い換えれば、パイロットが何が起きているかを把握する前に、飛行機自身がそれを把握しているということですから、第3世代のパイロットとしては緊急事態のときの頭の負荷がだいぶ楽になると感じるはずです。
故障の緊急度と重要度も飛行機が把握しているので、画面に提示されるチェックリストを上から順にやっていけば対策が終了します。
第4世代飛行機に乗るパイロットの役割とは
第4世代の飛行機は、通常運航はほとんど飛行機任せで飛べて、緊急事態でも、故障の診断と直接的な対策を飛行機がやってくれるということがわかります。
では、パイロットは何をするのでしょうか。それは、以下の3つです。
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