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クリスマスイブはシミュレータ訓練でした

正確には、24日は日程3日目の移動日で、シム自体は22/23日でした。

いやー。

疲れた。定期審査ってのは本当に疲れる。1回4時間、箱の中に入ってトラブルに対処し続け、いっくらベストを尽くしてもダメ出ししかもらえない。とはいえ、Good Goodって言われるとそれはそれでなんかうさんくさい。笑

でも、シムでいい評価をもらうためにパイロットやっているわけではない。そこんところを間違えないようにしないといけない。

後出しジャンケンのダメ出しは宿命

コクピットである問題に対処するには、複数の選択肢から一つを「自分で」選ばなければならない。「自分で決めて」やったことに対し、ダメ出しを「自分が」もらうのは、責任を引き受けるという意味で当然だ。そして、どんなやり方をしても批判的な見方をすることは可能なのだから、どんな選択肢をとったにせよ、後出しジャンケンでダメ出しを食らう余地は常にあるわけだ。

そのダメ出しが、その時自分で思いつかなかった選択肢である場合はもちろん、選択肢として考えた上であえて自分が選ばなかったことだとしても、自分がとった行動とコントラストになるような選択肢の存在を、行動の後に再度確認すること、つまり批判を受けることは、プロセスとしてとても大事なことなのだろう。

なぜなら、類似したトラブルが実際に上空で起こった時、その時はもしかしたら、シムで自分がやったようにするとうまくいかないかもしれないからだ。似たようなトラブルでも、周りの状況によって正解が180度変わるということはいくらでもある。自分の思考の傾向と対になるダメ出しを受けた経験が、バランスの良い判断を可能にするのだろう。

自分が考えていることがもしかしたら正解じゃないかもしれないという健全な批判精神を植え付け、思考の幅を広げるという意味で、シムで理不尽な目に遭うのは、もはや宿命なのだろう。そういうトレーニングは、精神的につらい。何をやってもある程度は否定されるんだから。

でも、そこで「んじゃぁ何が正解なんだよ!」と怒ってはならない。正解が与えられないのが、プロの領域。どっちも正解であり、同時に間違いでもある。そのことを受けれて、指摘を心に埋め込んで、有事に備える、というのが正しい態度であって、正解をくれないインストラクターに憤慨するのは、訓練の意味を理解していないことになる。パイロットの仕事は、シムでいい点を取ることではないと言ったのは、そういうことだ。

パイロットはみんな、少なくとも6ヶ月ごとに箱の中(と外)でそういうリフジンな目に遭い、納得のいかない指摘を飲み下して今日も仕事に向かう。その時は納得のいかなかったことでも、自分の中で折り合いをつけて批判を受け止められる者だけが、飛行機の一番前に座ることができる。自分が客として飛行機に乗る時にこの身を預けることができるのは、あいつらもおんなじ訓練受けて理不尽な思いをしているんだなと考えればこそなのだ。

というわけで、ヘロヘロになって帰宅したあと、クリスマスは、家族と一緒に過ごすことができました。肉食いました。

以下、有料版では、ATRのチェックリストの構成が、いかに罠に満ちているかという話(もはや愚痴)をしています。

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