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海外エアラインの試験ってこんな感じ(n=4)

海外のエアラインに応募するときの具体的な段階について、説明してみます。

でっかいところから小さいところまで、私が今まで試験まで進んだ航空会社は4社です。合格したところ、シムまで行って落ちたところ、ウェブ面接まで行ったところ、学科スクリーニングで足切りされたところと色々あります。もちろん、アプリケーションを入れただけで縁がなかったところは数しれずあります。

受けた地域はオセアニアとアジアです。アメリカとヨーロッパは受けたことがありませんから、ちょっと違うかもしれませんが、私が受けた会社はこうだったよ、という前提で話します。まずは一般的な流れを書いた後に、有料版で私の個人的な話をします。

さて、エアラインに応募してから合格するまで、一般的には以下のような流れになります。

1. 募集があることを知る

就職情報がまとまっているウェブサイトや、航空会社の採用ページをチェックして見つけることもあれば、就職情報サイトからのプッシュ通知、あるいは人づてに聞くこともある。

https://pilotcareercenter.com/

でも、結局こう言うところに出ている募集ってなかなか身を結ばないことが多くて、私が今まで受けてきた航空会社はすべて人づてか、その航空会社の採用ページからが多い。

2. 募集要件を確認する

んで、ここでだいたいがっかりする。いずれかの応募要件に満たないことが多いからだ。一番大きいのはビザで、どの会社も「その国で合法的に居住および就労するビザを持っていること=ほぼ永住権」という項目を設けていることが多い。これが最初の、そしてもっとも大きな関門となる。これを何とかして個人的にクリアしない限り、いくらフライトタイムを持っていてもどうしようもないことになる。

でも、たまーに、アジア系のLCCやキャセイなんかが、エアライン経験のない人でも手がとどく募集を出したりする。

最初の仕事が一番大変だけれど、一旦エアラインに入るとそれまで喉から手が出るほど欲しかったフライトタイムが自動的にログブックに書き込まれて行って、いつの間にかかなりのエアラインの募集要件に引っかかることになって来る。

3. アプリケーション(応募書類)を出す

奇跡的に、全ての要件を満たしていることが判明したら、応募することになる。ここまで来るだけで、10年くらい経っていると思っていい。私がトレーニングを始めたのが2011年だからやっぱりそのくらい。

最近は、全てオンライン化されていることが多く、企業の採用ページに行って、アカウントを作り、Webフォームに個人情報を入力していく。名前や連絡先はもちろん、ライセンス、ビザ、フライトタイム、職歴、学歴など、入力する情報は結構多く、数ページにわたって作られた応募フォームは入力内容をセーブして後で編集できるようになっていたりすることが多い。また、自分で作ったレジュメとCVをPDFファイルなどにしてアップロードすることもある。

全ての情報を入力し、最後のページで「ここにある情報は私の知る限りにおいて正確であり、虚偽のないことを約束します」みたいな宣誓にチェックを入れて「Submit」ボタンを押すと、晴れてアプリーケションがファイルされる。

4. 航空会社から採用試験の通知が来る

アプリケーションを出したら、あとはそのことを忘れて日々の生活に奔走することになる。そうしていつものように忙しいいつものある日、忘れた頃に見慣れないアドレスからEmailが届く。

「I am pleased to inform you that you have been selected for our flight crew interview.」

まじかよ。

5. 筆記試験(スクリーニング)を受ける

面接への招待メールは、いくつかに分かれていることが多くて、そのうちの一つにスクリーニングテストへのリンクが載っている。外部に委託するオンライン知能テストで、これが結構難しい。

日本の航空会社でもSPIなんかやると思うけれど、基本的に見られているのは次の三つ。

Deductive Reasoning(演繹的推論)・・・言語能力テスト
Inductieve Reasoning(帰納的推論)・・・パターンマッチング
Numerical Reasoning(数理処理能力)・・・計算、図表の読み取り

パターンマッチングはゲーム感覚でできるけれど、言語テストと計算テストは慣れが必要。というのも、解答時間が限られているので、一問数十秒という短い時間で答えていかなければならない。練習していないと、問題を読み終わることすら難しい。英語なら特に。

6. 面接とシミュレータチェックを受ける

スクリーニングテストに合格したら、いよいよ本番の面接とシムテストを受ける。1日で終わるところもあれば、2日間かけてやるところもある。

面接は、個人面談とグループエクササイズに大別されるけれど、会社によってはもっといろいろとやるところもある。パイロットとしてのテクニカルな質問(いわゆるオーラル)は、筆記試験、面接、シミュレータ中に聞かれる。筆記試験でやる場合が最も量が多く、教科書的な知識(High speed aerodinamics、VMCA系、ハイドロプローニングの計算式など)を問われる傾向がある。シミュレータ中に聞かれるのはIFRのプラクティカルなもの(Holding speedとかCategory Speed、MSAにミニマなど)が多い。

シミュレータ試験は、そのエアラインのFFS(Full Flight Simulator)に放り込まれて、基本的な操縦と、IFRパイロットとしての操縦を見られることが多い。当日にどんなことをやるか、どんなアプローチをやるのかを説明した資料(シムプロファイル)が事前に配られることが多い。

パターンとしては、離陸から上昇、水平飛行とスティープターン、そこからVORラディアル、ホールドに入ったり、ILSアプローチをすることが多い。スティープターンなどでぐるぐると振り回された後に、今どこにいる?というのも定番。RMIの基本的な使い方(針の真ん中が局で、ケツが自機の位置を示すなど)が重要になる。

オートパイロットは使えず、PMはフラップとギア操作だけということが多い。運動量の大きい大型旅客機のマニュアル操縦は、基本的な飛行機の操縦スキル(Pitch X Power = Performance)がしっかりしていないととっちらかってしまう、資料には、飛行機のパワーやピッチの諸元も書いてあるので、しっかりと覚えていったほうがいいだろう。

7. 合否発表

すぐに発表するところもあれば、引っ張るところもある。落ちた場合にフィードバックをくれるところもあれば、そうでないところもある。落ちてしまった場合はだいたい1年くらいしたら再チャレンジできるところが多い。

私が知っている採用の流れはこんな感じ。冒頭いったように、これまでに受けたエアラインは4社(アジアの会社と今の会社)で、どこも同じような形であった。

今の会社に合格するまで、3社に落ちたことになる。そのときは、まだ小型機のインストラクターだったので、経験的にも非常に不利な状態でやっていたから、落ちるのは仕方がないのだけど、毎回かなり凹むものだ。それでも、失敗を一つ一つ糧にして、最後に風前のともし火になりながらぶち当てた元気玉で、なんとか風穴が空いたのが今の会社だった。

あの時の悲壮感たるや。

現在の私の状況

さて、ここからは約束通り私の話をしましょう。

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