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ATPLテストレポート(後編)

前編はこちら

シナリオ上でやったアプローチもVORアプローチでしたが、これはFMSを使ってやった言ってみれば「イージーモード」でした。今回のは「本当の」VOR/DMEアプローチで、何が違うのかというと、計器から、縦方向のガイダンスがなくなることです。

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さっきのは、紫の十字の中心に真ん中の四角を合わせるように操縦すれば、下記のチャートに引かれたルートぴったりに降りていくことができました。

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チャートの見方はこちらを見てね!

しかし、今回はこれが使えません。特に、ピンクの四角で囲んだ「アドバイザリー高度」にピッタリ合わせて降りて行くには、パイロットが自分で降下率を調節し、実際の自分の位置と高度が、紙に書いてある数字と合致しているかをリアルタイムで確認しながらアプローチしていきます。「縦方向の推測航法」と言えるかも知れません。

まぁ、パイロットにとってはごく基本的なスキルなので、特段大騒ぎすることでもないのですが、イージーモードに慣れてしまうと、「技」はすぐに錆びついてしまいます。そのため実際の運航でも、時々VOR/DMEアプローチをリクエストして、腕がなまらないようにしていました。

VOR/DMEアプローチ

実際の空でVOR/DMEアプローチをする場合は、空港の真上から降下を開始するか、DMEアークと言って空港の15マイルのところにある点線の円弧に沿って飛ぶ必要があります。

NZNS_43_1_43_2_pdf(2___2ページ)

DMEアーク

DMEアークは、簡単にいえば先ほど説明した縦の推測航法を、「曲がりながら」やることです。当然ワークロードが増えます。テストでVOR/DMEアプローチをやると聞いた時は、あーあ、めんどくせえな、と思っていましたが、テスト当日に試験官が私の飛行機を置いた場所は、ちょうど上図のピンクの飛行機が描いてある位置で、簡単にしてくれました。

「ラッキー!」

高度は4000ft。スタンダードの5%(3度)のプロファイル(勾配)では、300ftは1NMなので、アドバイザリー高度の右端、2970ft (10NM)に+900ft (3NM)で約13NM、もうちょい正確にやるなら13.5NMですね。

NZNS_43_1_43_2_pdf(2___2ページ)

ネルソン空港から13.5NMのところに来たら、降下を開始するわけですが、それまでに飛行機のスピードを安定させて、ギアやフラップを出し、チェックリストを終わらせておきます。

「縦」の推測航法のコツ

表示されているグラウンドスピード(GS)に5あるいは6を掛けた数字が、3度の降下率(ROD)の目安になります。例えば、GSが120ノットなら600〜700fpmといった具合です。TODをミスらず、GSに対してRODが適切なら、次の指標である「9マイル」を「2650フィート」で通過するはずです。

1マイルごとにちゃんと300フィート降りるためには、このGSとRODの関係がちゃんと「推測」通りにいかなけばなりませんが、GSは風や機速で常に変化しますから、ある地点で高くなったり低くなったりとエラーが出てきます。

大事なのは、エラーを出さないことではなく、このエラーに早めに気づき、スピードやRODを小さく調節して、エラーを収束させるように操縦する(トレンドをコントロールする)ことです。

ところが、スピードが安定しないままアプローチに入ったり、最初にTODやRODを大きくずらしたり、チェックリストが忙しくて高度のモニターがおろそかになったり、大きなエラーを一気に修正しようとしてパワーをガチャガチャ動かしたりすると、エラーが発散してしまいます。

TODまでに全ての仕事を終わらせておきたいのは、このためです。TODを確実に決めて、降下中に二人のパイロットが同時にプロファイルモニタリングに集中できる状態を作り、早めの小さな修正を心がけることが、このような「Non-Precision Approach(NPA):非精密進入」をビシッと決めるためのコツになります。

事件はサークリングアプローチで起きた


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