【2024年版】パイロットのメンタルコントロール
最近、シミュレータや訓練や試験で緊張してしまって成果が出ないというご相談がわりと重なり、以前も、似たような話をこちらのマガジンに投稿してきました。
需要があるトピックのようなので、最近の私自身の経験のアップデートも含めて、もう一度この辺の話を書いておこうと思います。
私も、試験に落ちたりして悩むこともありましたが、幸いにしてリカバリーに協力的な会社に恵まれてここまでやってきている気がします。
色々経験してきた中で、個人レベルで行き着いた結論を一言で言うと、
これが全てです。
「今、ここ」に集中する
シミュレータ試験や就職試験などの「大きな舞台」でなくても、緊張する場面というのは普段から存在します。
例えば、夜間着陸を日が空いた状態でやる、みたいな状況を考えると、当然緊張するわけですが、緊張や不安は、実際の着陸操作をするときまでしか、原理上存在できません。不安とは「自分がこれからどうなるかわからない」という類の恐怖ですから「どうなるか」の真っ最中には恐怖は発生し得ないからです。
コミュニケーションや意思決定などの、ノンテクニカルスキルはまた話がちょっと違いますが、着陸やエンジン故障の対応などのテクニカルスキルは、身体を通して発揮しなければなりません。ですから、パイロットがスキルを発揮するその段階にあってもまだ頭がごちゃごちゃ考えていると、うまくいきません。
もちろん準備として気をつける点などを事前に勉強や練習やブリーフィングすることは大事ですが、実際に着陸の「作業」をするときは、自分の身体的な反応を信頼して、「身体に任せる」必要があります。
「身体に任せる」=「今、ここに集中する」です。準備やリスク管理は徹底的に悲観的にやらなければいけませんが、いざ、スキルを発揮する段階になったら、逆に楽観的になって自分の体がオートマティックに動くのに任せる必要があります。
それには、頭が過去や未来の失敗に引きずられないようにしっかりとコントロールしなければいけませんが、心がグラグラしていると、体が技術を発揮するのを邪魔してしまいます。これが、「緊張して本番で力が発揮できない」状況の正体です。
パイロットの心・技・体
武術やスポーツの世界でも「心・技・体」なる概念は存在しますが、パイロットとして技術を発揮する構造も、この概念で捉えることができます。
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