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パイロットが心理テストを受けてみた結果 その4. 判断の根拠(Nature)理性(Thinking) - 感性(Feeling)

個人の性格を5つに分けて示す心理テスト「NERIS Type Explorer®」を受けた結果について、連載しています。→最初から読む

このテストでは、人が世界をどう見ているのかを、5つの座標軸で測定します。

1. 興味の方向(Mind)
外向(Extraverted) - 内向(Introverted)
2. 情報の使い方(Energy)
観察(ObServant) - 観念(INtuitive)
3. 判断の根拠(Nature)
理性(Thinking) - 感性(Feeling)
4. 外界への接し方(Tactics)
決定(Judging) - 未定(Prospecting)
5. ストレスの御し方(Identity)
平静(Assertive) - 多感(Turbulent)

https://www.16personalities.com/articles/our-theory
(日本語は筆者による訳)

私の性格は「INFP-A」でした。

前回は、このうち3. 判断の根拠(Nature) 感性(Feeling)について、パイロットへの適性と絡めて考えてみました。今回は、

4. 外界への接し方(Tactics)決定(Judging) - 未定(Prospecting)

について見ていきます。

4. 外界への接し方(Tactics)
決定(Judging) - 未定(Prospecting)

外界への接し方、特に未来や将来に対する態度について考えてみます。私は、「INFP-A」ですから、「未定」ということになります。旅行なども綿密な計画を立ててそれにしたがって実行というより、行き当たりばったりでその辺の店に飛び込んでなんとかなるべえ、という態度です。

実は私の妻が真逆で、旅行では行きたい店やイベントを正確に把握して、その通りに間違いなく実行しようとします。一度も行ったことのないスペインの片田舎のバス停の時刻表を把握していたりします。

そのおかげで、ほとんどの場合時間やお金のロスなく旅行することができますが、一方で、何かトラブルがあってひとつがうまくいかないと、その後の予定が全て狂ってしまいます。

例えば、行きたかった店が何かの都合で閉まっていたり、時間通りにバスが来なかったりした場合。あるいは、調べてあったイベントの料金が改定されていたり、ホテルのチェックインが予想より遅かったりした場合など。こういうときは、逆に私の出番になります。

時間通りにバスが来なかったら、その辺にあるカフェを見つけて聞いたことのない名前のコーヒーを頼んでみたり、イベントの料金が改定されていたらサクッと払って忘れたり、ホテルのチェックインができなければ、大きな荷物だけフロントに預けて散策に出かけたり。

物事は、予定通りにいかないものだと初めから諦めていれば、対策も出てくるものです。

Keep the Options Open

飛行機にも、これは当てはまります。いきあたりばったり、というと言葉は悪いですが、どんなに事前情報を集めても、実際に上がってみるまで何が起きるか100%当てることはできません。

例えば、パイロットは、仕事が始まる前に毎回ウェザーブリーフィングを行います。コンピュータの性能が上がって、モデルの解析が正確になっているため、正しく情報を解析すれば、かなりの精度で予想をすることができますが、同時にパイロットの仕事は飛行機を飛ばすことであって、気象解析ではありません。

日本には、ディスパッチャーと呼ばれる気象やルート選定をパイロットが出社する前にやってくれる専門職がありますが、ニュージランドにはこのような専門職はなく、ルートの選定やウェザーに対する解析はパイロット自身が行います。

ちなみに私の会社では、飛行機の出発時間の45分前がサインオン(出社)タイムになっています。45分で天候解析、ノータムの確認、燃料搭載量の決定、MELの確認、フライトアテンダントへのブリーフィング、ゲートへの移動、機外点検、出発準備を行います。ボーディングは出発時間の20分前なので、出社してから操縦する飛行機にたどり着くまで事実上25分しかないことになります。

この短い時間の中で、天候の解析にダラダラと時間をかけているわけには行きません。ですから、天気図も日本のように高層天気図をみたり、色を塗ったりすることはなく、SIGMETで有害な天気を確認、地上天気図と雲画像で低気圧や前線の位置を確認し、最後にMETARとTAFで法的な要件を確認して終わりです。個人的にはジェット気流の位置だけはいつもみていますが、ほとんどの人はやっていません。

小さな島国のリージョナル運航という特性もありますが、基本的には天気はそこまで細かく予想しようとするのではなく、ある程度の情報を持ったパイロットが実際に上がって、目で見て避けるものという認識があります。そのために判断力を持った人間が一番前の席に乗っているのであって、もし予報が完璧に当たるのなら、とっくに我々はお払い箱になっているはずです。

4. 外界への接し方(Tactics)決定(Judging) - 未定(Prospecting)」での「未定」側にある私の性格は、そういう意味でパイロットとしての仕事に応用が効きやすいといえるかもしれません。

優柔不断

一方で、その場で「柔軟に対応する」とか、「臨機応変」といった態度は、見方を変えれば結論を出すのが遅い「優柔不断」な態度であるとも言えます。

また、その場で判断をするにも、大まかな情報を持っていなければ大きく間違えることにもなります。先の天候の例で言えば、初めから天気を全く見なかったり、見たとしても低気圧の位置などの大きな情報を取り入れずにMETARとTAFだけ見ていては「これからどうなるか」という大まかな情報を掴むことはできません。誰も飛ばないような日に、無策で、ノコノコと上がっていってしまうようではパイロットとしてはいただけないでしょう。

大事なのは、常に情報を集めることです。

大局を決める大まかな情報と、実際に起きていることの詳細な情報。天気図の前線の位置と、今目の前に見えてる雲の位置や形、タービュランスの強弱。そういったことをバランスよく組み合わせて初めて、「ここは、左ではなく右に避けよう」という判断ができます。

どちらに偏ってもうまく行きません。予報では、前線の位置がここにあるはずだから、目の前のこの雲は積乱雲であるはずがない、といくら吠えても、そのまま真っ直ぐ進んだらその黒くて背の高い入ってしまったら本末転倒です。逆に、何も知らずに上がっていって、気がついたらウィンドシアにはまってしまったら、これもとてもプロの仕業とは言えません。いくらウィンドシアプロシージャを完璧にこなしても、飛行機のパフォーマンスがそれを上回るかは保証されていないからです。

バランスよく

結局どちらにしても「バランスよく」が大事であって、どちらに偏ってもうまくいかないのは、他のあらゆることと同じでしょう。

そういう意味で、性格検査は自分がこういう人間だ、と決め打ちするようなものではなく、こういう傾向があるから、こう気をつけよう、と参考にする程度でちょうどいいのかもしれません。

さて、連載も長くなりましたので、ここらでシリーズは締めたいと思います。

5. ストレスの御し方(Identity)平静(Assertive) - 多感(Turbulent)

については、割愛します。

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自分が訓練生だった時に、こんなレポートがあったらよかったな!と思えるような内容を意識しています。自分で言うのもなんですが、日本語で書かれたパイロットに関する読み物として、ここまで具体的、専門的、かつ平易な言葉で書かれたものはないと自負しています。ご購入者の方の満足度を最優先に考え、収録してある全ての有料記事が今後追加される記事も含めて追加料金なしでお読みいただけます。ご購入者の方々とは、応募フォームやコメントを通じて交流や訓練の相談をしています。よろしくお願いします。

NZ在住のパイロットAshによる飛行士論です。パイロットの就職、海外への転職、訓練のこと、海外エアラインの運航の舞台裏などを、主に個人的な…

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