続続・天気が悪い時のパイロットのプランニング:アプローチの方式によって異なるミニマを選択肢に
だいぶ前に、天気の悪いときのプランニングの流れを説明したnoteを書きました。これと、これです。
当該記事では、スタンバイで呼ばれてロトルアへいく便をやることになり、天気予報を見ると天気が悪かったので出勤する前にどんなことを考えて、プランニングするときには何に注意するのか、その思考の流れを紹介しました。
温泉の街 ロトルア
ロトルアは湖と温泉の街。例のウイルスが流行る前は日本人観光客にもとても人気のある観光地でした。何度か日本人観光客がたくさん乗った便をやったこともあります。
しかし、情緒のある温泉街も、パイロットにとっては悩みの種。湖があるので湿気が多く、湖からの移流霧が出ると午前中いっぱい晴れません。また、ロトルア湖は大昔の火山活動の結果生まれたカルデラ湖で、湖が丘に囲まれているような形をしています。これがアプローチにも影響を与えます。
黄色の線が丘のライン、赤いラインが空港の滑走路です。
飛行機は周りの急峻な丘を避けながらアプローチしなければなりません。特に、北向きに向かって着陸するランウェイ36は、特に高い山が滑走路の南にあるので、これを避けるために角度をつけて着陸します。
RNAV36と滑走路の傾きに注目!
日本と同じく、山がちなニュージランドにはこのような空港がかなりあります。ファンガレイやネルソン、クイーンズタウンなどが典型ですが、このようにRWYに正対できないアプローチは、パイロットが滑走路を目視して、飛行機を機動させていく必要があるため、前回説明したミニマが高くなります。
RWY36 RNAV Bアプローチ
私の飛行機はCategory B、Circling アプローチで地表から
924ftの高さまで降りられます。
これに対して、逆方向の滑走路18へは、まっすぐ降りることができます。すると、VNAVという縦方向のGPSガイダンスを使うことができるので、より低い高度まで滑走路を目視せずに降りていくことができます。
RWY18 RNAV Zアプローチ
Circling が LNAV/VNAVに変わっていることと、数字の低さに注目。地表から495ftのところまで降りられます。
およそ500ft(150m)の差ですが、これが大きい。仮に、雲が地表から600ftにある場合、RWY36(RNAV B)では雲を下へ突き抜ける前(942ft)にミストアプローチ(着陸をやめて再上昇すること)をしなければなりませんが、18であれば、雲を突き抜けて、ミストアプローチまではさらに100ft余裕があります。その間に、まっすぐ目の前にある滑走路を視認できれば、アプローチを続行できます。
追い風着陸をオプションとして持つ
さて、前回のラストで、こう言いました。
ところで、RWY 18はどうだ
これはつまり、よりミニマの低いRWY18を選択する余地はあるのかと考えているわけです。前回使った天気を見てみましょう。
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Pilot's note NZ在住Ashの飛行士論
NZ在住のパイロットAshによる飛行士論です。パイロットの就職、海外への転職、訓練のこと、海外エアラインの運航の舞台裏などを、主に個人的な…
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