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チェックの結果

無事パスしました。あぁ、よかった、ビールがうまい。

前回もそうだったけれど、今回もシングルエンジンになったときの飛行機の操縦が安定していたので、細かい取りこぼしはあるにせよ、全体がまとまってきている気がします。やはり「飛行機を飛ばすこと」の重要性は、強調しすぎることはありません。

「飛行機を飛ばすこと」が大事なのは、どんな飛行機でも変わらない原則ですが、その中でも私が飛ばすターボプロップでは、パイロットが手と脚で飛行機を飛ばす技術がまだまだ必要とされていると感じます。

飛行機によって常識が違う!

特に、私が乗っているDHC-8(ダッシュ8)は古い飛行機なので、オートパイロットの能力が限られています。そのため、マニュアル操縦技量の比重が大きい気がします。

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例えば、離陸時のオートパイロットは、空港の標高から1000ftの高度に達するまで使えません。着陸するときは100ft(CAT2)まで使えますが、パイロット自体がCAT1のトレーニングしか受けないので、実際には使っても200ft(CAT1)。ただし、(CAT1ミニマにならない限り)人にもよりますがパピが見えて安定したら切る人が多いです。ビジュアルアプローチでは、人にもよりますが、RWYが見えた段階でFDを消して、目と手で飛ばすのを好む人が多いですね。

メモリーアイテム中も切らなければなりませんし、シングルエンジンの場合は、着陸時でも1000ft以下は使えません。

オートパイロットがいつ使えて、いつ外さなければいけないのか。これをしっかりと覚えていなければいけないのはもちろん、地表に近づけば近づくほど、また、操縦が難しい状態(片エンジン停止など)であればあるほど、マニュアルで操縦する必要があるために、試験でもマニュアル操縦の技量はかなりシビアにみられます。

ちなみに、ゴーアラウンドは、TOGAボタンを押すとオートパイロットが外れます。そんなの当たり前だと思っていましたが、先日、エアバスのパイロットと話をしていて、ゴーアラウンド時の話が妙にかみ合わないと思ったら、「えっ、ゴーアラウンドでオートパイロットが外れるの?」と、驚かれました。

飛行機が違うと、ここまで常識が違うものかと、私のほうが驚いたものです。

ジェットとプロップ

エアバスは「ジェット」で、ダッシュは「ターボプロップ」です。

現代の「ジェット」エンジンは、正確には「ターボファン」エンジンといいますが、いわゆる、「ジェットエンジン」と言われて思い浮かべるのは、こういうやつじゃないでしょうか。

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私が乗る、ターボプロップのエンジンはこういう見た目です。

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両者は、ガスタービンの先に推進プロペラ(ファン)をつけている点で、同じものですが、それぞれが得意とする速度域や高度域が違います。

ターボファンエンジンは、より高く、速く飛べ、最高出力が非常に大きいのが特徴です。遠距離路線を高い高度で飛ぶのが得意。

これに対し、ターボプロップエンジンは、近距離路線を低く飛ぶのが得意で、最高出力が抑えられている代わりに、燃料消費が段違いに良いのが特徴です。軽自動車とスポーツカーでは、走り方も燃費も違う、と言えばわかるでしょうか。

別の言い方をすれば、低い高度・速度域で飛ぶなら、小さいエンジンに巨大なプロペラをつけ、少ない燃料で、十分な出力が出せるということです。

しかし、このことが、ターボプロップの特に片肺時の操縦を難しくしている理由でもあります。

プロップの特徴

ターボプロップのガスタービンは、ターボファンのそれに比べて大幅に小さく、出力も低いですが、プロペラを巨大化し、枚数を増やすことで小さな出力でも大きな空気の塊を押し出して推進力を得ています。

また、もともとの非力さを補うためにプロペラの角度が変わるようになっています。自転車についているギアのイメージです。上り坂になったらギアを軽くし、下り坂になったらギアを重くしますよね。それと同じことをプロペラの角度を変えることで実現しています。

プロペラの角度を、飛行機の進行方向に直角に近くなるようにすればするほど、「ギア」は軽くなります。これをファイン(薄い)ポジションと言い、その逆ではコース(厚い)ポジションと言います。

離陸時は「上り坂」ですから、フルファインポジションで昇っていくわけですが、ここでもしエンジンが一発壊れたらどうなるでしょうか。フルファインになっているプロペラブレードは、ちょうどプロペラの直径と同じ円盤をくっつけているのと同じ空気抵抗を生みます。その結果、止まったエンジンの方向に向かって強烈なヨーイング(機首が左右に振れること)を起こします。

実際にはオートフェザーといって、プロペラの角度を自動的に縦にする機能がありますが、ここでは割愛します

で、私の場合はダッシュ8なので、この間、エンジンをシャットダウンして1000ftに達するまで、オートパイロットは全く使えません。ぐにゃぐにゃしようとする飛行機を、びしっとまっすぐ進ませるには、技量が必要になります。

現代のエアラインパイロットのトレーニングで必ず行われるのが、この離陸時のエンジン故障の対処です。飛行機の種類にかかわらず、また、キャプテン、副操縦士ともに、6か月毎のシミュレータチェックで必ずこの項目は審査されます。

当然、今回の私のシミュレータチェックでも審査されました。以下では、プロップの難しさを、今回のシムに絡めて説明してみます。専門用語多めです。

例によって、具体的な内容が入るので鍵をかけさせていただきます。

プロップの難しさ

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