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パイロットは長い長いコクピットプロシージャをどうやって覚えているのか

着陸後、たまに子供たちに軽くコクピット見せることがあるんですね。

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で、子どもたちが

「こんなにたくさんのスイッチどーやって覚えんの!?!」

と叫ぶのが常なのですが、今回は、私が目下行っている機種移行訓練に絡めて、この質問に答えてみたいと思います。

2話完結です。後半はこちら

ATR機種移行訓練

さて、私のATRへの機種移行訓練ですが、退屈だった学科が終わり、プロシージャ(コクピットでのスイッチ操作や確認事項の手順)を憶える訓練に入りました。

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FPTと呼ばれるコクピットを模したゲーム画面のような機材を使って、プロシージャを練習します。

画面はタッチパネルになっていて、映っているスイッチやレバーを触ると実際にアニメーションで動き、コクピットと同じリアクションを返し、同じ警報を鳴らします。実際のフライトトレーニングで使うシミュレータは動かすのも大変なコストがかかるので、本格的に飛行訓練が始まるまでこれで頑張ります。

みんな大好きカミレータ

もっとも、こういうファンシーな機材があるのは比較的新し目の飛行機で、古い機械式のコクピットはポスター(カミレータ)で練習するのが常でした。前機種のダッシュ8はもちろん、

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今回移行するATRでもポスター配られました。

ホテルにもどったら、これを広げてスイッチやレバーの位置を確認しながら手順を憶えていきます。

なんだ紙かと思うかもしれませんが、これがあなどれません。どんな飛行機も、「パイロットがコクピットに入り、目で計器を見て、手でスイッチやレバーを操作する」という動作は同じだからです。

訓練生として最初に乗る小さなセスナでも、最新鋭のエアバスでも、世界中のパイロットが皆、一人残らずこの地味な作業を繰り返した経験を持っています。乗っている飛行機や役割や段階の違いは関係ありません。皆、一緒です。

寄る歳波

さて、私が目下トレーニングをしているATRは、コンピュータ化が進んだハイテク機で、パイロットの負担が減っているかと思いきや、実は逆に負担が増えているところもあります。

電源が完全に落ちた状態からコクピットを立ち上げる「コールドスタート」がその典型で、コールドからテイクオフまで持っていくのに、正確に数えたわけではありませんが、恐らく1000以上の手順を経ていると思います。飛行機にインプットする情報が膨大なのです。

で、まさに我々が今やっているところが最初の関門であるコールドスタートからのプロシージャなんですが、4人の訓練生が2組に分かれてやっています。

比較的若いニーチャンが2人いて彼らが組になり、私(30代)と50代のおっちゃんが組になりました。

年上のバディと組むのは初めてだったのですが、彼が中々覚えが悪い。学科でも割とスローでしたが、プロシージャトレーニングに入ってからあー、とかうーとか言う機会が増えて、全く前に進みません。午前中の訓練は散々でした。彼のバディは私なので、このままでは私の訓練の進捗にも影響が出てしまいます。

実は、プロシージャの憶え方にはコツがあるのですが、インストラクターが若い教官経験のないやつなので、どう教えたらいいのか分からず、できない彼に苛立ちながら矢継ぎ早に指示を出してしまいます。インストラクター経験は私のほうが長いので、これじゃうまく行かないことはすぐにわかりました。

これ以上、彼をインストラクターにつけていても意味がないので、午後は若い衆がプロシージャトレーニングに入っている間、彼を食堂に連れ出し、年寄り勢はカミレータで一緒に特訓を行いました。

その結果、翌日の彼の進捗に驚くべき変化が。さて、私はいったいどんな訓練をしたのでしょうか。

つづく

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