エラーレス ラーニング(無誤学習)とは?〜応用行動分析の理論から〜
こんな光景、見たことありませんか?
子「これ買ってーーー!!」 駄々をこねる
親「今日は買わないよ。」
子「ぎゃーー!!買って買ってーー!!!」 もっと癇癪を起こす
親「もぉ…今日だけね」 と買ってしまう
子「やったー」 泣き止み落ち着く
このやり取りで、子はこんな学びをします
おもちゃを「買って」と言う
↓
断られる
↓
もっと激しく駄々をこねる
↓
買ってもらう(願いが叶う)
↓
同じ方法を繰り返す
”駄々をこねる”行動が強化されたことになります。
これがいわゆる誤学習です
療育者である親は、その場を何とかなだめるためにおもちゃを買いましたが、その結果間違った学習をし、同じことを繰り返してしまう可能性が高まります。一度間違った学習をしてしまうと、修正にはなかなかの労力と時間を要します。
そうなる前に、正しい学習をしようという考えが
エラーレスラーニング(無誤学習) です。
学校でも誤学習をしてしまっている例を見ることがあります
「勉強がわからない・つまらない」
↓
「立ち歩く」
↓
「注意される」(注目してくれる)
↓
「教室から飛び出す」
↓
「先生が追いかけてくれる」(構ってくれる)
これを修正するには、かなり時間と労力がかかります。
もちろん、その行動の背景にある要因を適切にアセスメントすることが大切ですが、以下に紹介する応用行動分析の考えも役に立つと思います。
応用行動分析とは?
応用行動分析では、『ABC分析』と呼ばれる分析が基本となります。
先行刺激(Antecedent Stimulus)
↓
行動(Behavior)
↓
後続刺激(Consequence Stimulus)
例えば、自分からあいさつをするのは、挨拶によってその相手がにっこりとしてくれるから、あいさつという行動が強化され、維持されると考えられます。
このように、行動の前にあるきっかけだけが大切なのではなく、行動の後の結果によって、行動を増やしたり減らしたりします。
学校の例では、立ち歩いている子がいたときに「座りなさい」と先行刺激を出すことは多いですが、座れた時に「よく座れたね」と即座に褒める(後続刺激)などのポジティブなフィードバックをすることが大切です。
普段の関わりで先行刺激ばかりになっていないか、後続刺激とのバランスをぜひ振り返ってみてださい
先行刺激の例
「がんばれ」
「あと少し」
「静かにしましょう」
「座りましょう」
「前を向きましょう」
後続刺激の例
「よく頑張ったね!」
「最後までできたね!すごい!さすが!」
「静かにできたね!」
「よく座れたね!」
「良い姿勢で前を向いているね!」
すでに、誤学習してしまっている場合でもこの『ABC分析』は有効です。(修正にはそれなりの時間・労力が必要かも…)
冒頭の買い物の例の場合、おもちゃを買わないと
『癇癪を起こす』行動が一時的に激しくなってしまうことがあります。
買って欲しいという感情は受け入れながらも、
「買ってあげる」という後続刺激ではなく
↓
我慢できた時に「褒める・認める」という後続刺激を
地道に続けていくことで、癇癪を減らしていけるでしょう。
望ましくない行動を減らし(弱化)
適切な行動を増やす(強化)
する意識をもって接することで、その時の感情に任せず冷静に、先行・後続刺激をすることができると考えています。
エラーレス ラーニングの勧め(誤学習をしないために)
人間を含めた動物は、ある行動を褒められたり、エサを得られたりするなど、ポジティブな結果が起きるとその行動が増えます。(強化)反対に、ネガティブな結果が起きるとその行動は減少します。(弱化)
大人の役割は、こどもたちの適切な行動を増やすこと
適切な行動が見られたときには、積極的に褒めたり認めたりして、その行動を強化することが重要ではないでしょうか。
目標を子どもと考えるときには、
「ご飯を残さない」
よりも↓
「ご飯を全部食べる」
「図書館で大声を出さない」
よりも↓
「図書館では静かにする」
の方が、
できないから叱る(大声を出すを弱化)
よりも↓
できたから褒める(静かにするを強化)
に意識が向きやすくなります。
褒められる・認められるシチュエーションを意図的に作ることで、何を褒めたらいいかが明確になり、子どもにとってもどのように行動すればいいか、がわかりやすく伝わりやすくなります。
一度、誤学習してしまうと修正は難しいです。
無誤学習はとても合理的な手段だと思います。
失敗から学ぶ「トライ&エラー」
ということももちろん重要ですが、
私の考えでは、ある程度の成功体験・自尊感情があり、失敗して再チャレンジできるエネルギーがあることが前提です。
発達障害などが背景にあり、成功体験が少ない場合
「トライ&エラー」を適切に行えず、
「エラー&エラー」になってしまう恐れがあります
失敗して再チャレンジできるエネルギーがあるかをしっかり見極める必要がありますね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
以下に参考文献を載せておきます。さらに学びを深めたい方、ぜひ手に取りお読みください😊