『日本再興戦略』を読んで 〜東洋人の本質を取り戻せ!〜
はじめに
今回、落合陽一さんの本を初めて読みました。
最先端のテクノロジー研究者でありながら、
アーティストとしてもご活躍されているため、
その教養と経験に裏打ちされた引き出しの多さに、
終始感動しながら読み切ってしまいました。
本書はタイトル通り、
「日本の再興にはどのような戦略が必要か?」
について語られています。
東洋思想に回帰する重要性、
そして大学教員も務める落合さんならではの、
研究と教育の重要性を語られている部分が、
非常に面白い一冊です。
東洋思想を学び、日本のルーツを取り戻せ
まず面白かったのが、
日本という国を歴史的に分析し、
現在のあり方がいかに欧米に無理に合わせにいった
スタイルであるか、を指摘している点です。
「欧米」「グローバル人材」といった、メディアによく出てくる定義できない言葉によって成り立つふわっとした言説は疑ったほうがいい。(中略)まずは「欧米」という幻想から解き放たれないといけないのです。
本当にその通りだなと、
身が引きしまる思いがしました。
私たち日本人は、
何かにつけて欧米と比較して、
卑屈になってしまうことが多い気がしますが、
そんな必要はないのです。
何でも欧米に追いつけばいいわけじゃないし、
何でもグローバル化すればいいわけじゃない。
日本にも悠久の歴史があるわけですから、
自分たちにフィットしたやり方があるわけです。
響きのいいマジックワードに騙されることなく、
言葉に対する感度を高め、
ものごとの本質を見抜ける人でありたいですね。
さて、ではその日本人っぽさとは、
具体的にどのようなものがあげられるでしょうか?
東洋的には、ずっと仕事の中にいながら生きている、そしてそれがストレスなく生活と一致しているのが美しい。むしろオンとオフを切り分けたら、世界は幸せな状態ではなくなるのです。つまり負荷がかかっている状態を容認することになる。無理なくできることを組み合わせて生きていけるようなポートフォリオ設計をすることが大切なのです。
例えば、仕事とプライベートの話。
「ワークライフバランス」
という言葉が最近特に流行っていますね。
残業への規定が厳しくなったりと、
仕事とプライベートのバランスを守る動きは、
現代日本にも根強いものなのかなと。
そこで落合さんは反対に、
「ワークアズライフ」を提唱します。
その根拠が上記の引用部分。
そもそも日本人は、
農業をやるにしろ、手工業を営むにしろ、
生活の一部として仕事が存在していました。
それが、いつの日からか、
ストレスがかかる「仕事」は「オンモード」で、
そうでない「プライベート」は「オフモード」、
という風に区切られるようになってしまいました。
これは明らかに西洋的な発想です。
歴史的に日本人には、
「ワークアズライフ」があっているのだから、
ストレスなくこなせる仕事を、
日常の一部として取り入れていけばいい。
ストレスなく楽しくやれているのなら、
「仕事」も「それ以外の時間」も区切りはないはず。
これも納得できる人は、
意外と多いのではないでしょうか?
昔は「幸福」と言っていたのが、「幸せ」になってしまったことで、「ハッピー(幸)&ラッキー(福)のうち、ラッキーが抜けて、ハッピーだけになってしまいました。西洋的な幸福感は押し付けられたものなのに、今の日本人はメディアの基準に照らし合わせて「とにかく幸せでないといけない」と信じ込むようになってしまいました。
続いては、幸福観について。
これもなるほどなぁと思いました。
私たちが「幸せ」だと思うものは、
とりわけマスメディアや広告によって
煽り立てられたものが多いのです。
大金持ちの芸能人の豪邸がもてはやされたり、
テレビドラマで特定の職業生活が理想化されたり。
もちろんそれが幸せな人もいますが、
全員が全員そういうわけではない。
そうやった構築された「幸せ」の幻影を、
盲目的に追いかけることだけしていては、
もっと身近にある
「ハッピー」や「ラッキー」に、
目を向ける機会がなくなってしまう。
「幸福」っていうのはもっと日常にあるもので、
パーソナライズされたものなのでしょう。
「幸せ」じゃなくて「幸福」を追い求める。
「こうふく」って何だか、口にするだけでいいことありそうですよね笑
とくにこれから重要になるのが、「百姓的な」生き方です。百の生業を成すことを目指したほうがいいのです。そうすれば、いろんな仕事をポートフォリオマネジメントしているので、コモディティになる余地がありません。
そして今後の働き方について。
そもそも百姓とは、
100の仕事をする人のことです。
田植えをしたり、収穫をしたり…。
実は、医術も百姓の中のひとつと言われています。
今後は副業は誰もがするようになり、
「本業」「副業」の区別がなくなり、
「複業」が当たり前の時代が来ると思います。
私も一つの会社にいるつもりは全くないですし、
どんな副業で稼いでいくかの戦略は作っています。
百姓の精神を持っている日本人には、
ひとつの仕事にコミットするよりも、
同時にたくさんのことをこなす方があっている、
ということなんですね。
尊敬している方の座右の銘が、
「現代の百姓になる」だったのを思い出して、
これからの時代のキーワードの一つが「百姓」、
なのはほぼ間違いないだろうなと思っています。
これからの時代は、複数の職業を持った上で、どの職業をコストセンター(コストがかさむ部門)とするか、どの職業をプロフィットセンター(利益を多く生む部門)とするかをマネジメントしないといけません。
そのうえでの、稼ぎ方についてです。
こちらも非常に納得感がありますね。
落合さんは、
会社経営や、本の執筆、メディアへの出演などが
「プロフィットセンター」で、
大学での研究や教育が「コストセンター」、
として捉えているそうです。
「お金じゃなくて夢を追え」
なんてことがよく言われていますが、
一方でお金は、
活動を回していく血液みたいなものなので、
巡りが悪いと破綻してしまいます。
どの領域で効率よく稼ぎ、
どの領域に時間とお金を投資するのか。
本当の意味で、
個人の戦略性が問われる時代ですね。
我々は東洋人なのにもかかわらず、あまりに東洋のことを軽視しすぎです。バックグラウンドにある東洋思想を学ぶべきなのです。
今までの議論のまとめです。
高尚な思考実験を繰り返すだけで、
一般人が馴染みずらい西洋哲学とは違って、
東洋思想は、「日常をどう生きるか?」
というテーマにフォーカスしたものが多く、
私も孔子や孟子の思想などは、
積極的に勉強して取り入れています。
ぜひぜひ本書と合わせて勉強してみてください!
まずは専門性を掘り下げろ、その上で幅を広げろ
「スペシャリストになるべきか?」
「それともゼネラリストになるべきか?」
という二項対立は、しばしば議論にあがります。
それに対する落合さんの答えは、
「両取りを目指せ」ではないかと私は解釈しました。
横との交流は、トップ・オブ・トップに会えるようにならないとあまり意味がないですから、まずは一個の専門性を掘り下げて名を上げたほうがいいのです。ニッチな分野でも構いませんので、とにかくまずは専門性を掘るべきです。せめてひとつは、トップ・オブ・トップの人と話すに足る何かを探さなくてはなりません。
上記のように、
まずは自分の専門性をどこまでも掘り下げること。
それによって自分に語れるものができると、
他の分野のトップオブトップとつながっていく。
それによって、自分の専門だけでない、
幅の広さというのが生まれてくる、ということです。
何かを極めようとする姿勢や、その情熱で、
人はつながっていくのだと私も思っていて、
そこに領域や業界の壁はないのでしょう。
トップオブトップの人たちと、
それぞれの領域で肩を並べながら、
最高にワクワクする未来に向かっていきたいですね。
研究には必ず新規性が求められるので、誰かがすでにやったことは研究にはなりません。要は、研究することによって、その分野におけるトップ・オブ・トップになれるのです。
そのトップオブトップへの道のりとして、
落合さんは研究の重要性を語ります。
本当におっしゃる通りですね。
私は教育社会学を専攻していますが、
学部選択の時に描いていた仮説が変わり、
現在は心理学の領域に非常に強い関心があります。
大学を卒業したら、
仮説を検証するために数年は実務に携わりつつ、
そこから大学院に戻って研究もありだなと。
落合さんの実施したスキームで、
自分のラボを大学に作ってしまうのもまた、
非常に面白いなと思っています。
若い時にこそ、後進の教育に力を入れろ
むしろ若いときにこそ、後進の教育に力を入れたほうがいいと思います。僕が今、学生に投資すれば、学生が育っていくときに僕も育っていくので、一緒に時代を変えていくことができるからです。
最後は教育に関するトピックですが、
これも納得感のあるものですね。
後進の育成を25年間続けている、
鈴木寛先生のお話を伺った時にも、
同じことを考えました。
今の自分の年齢では、
師匠に当たる人を探すことは大事ですが、
それと同じくらい、もしかしたらそれ以上に、
自分と一緒に成長していく情熱的な同志を探し、
一緒に学び合っていくことが重要なのだと。
若い時は、
多くの人が未上場の人材です。
そこに投資することで、
上場した時にとてつもない価値になる。
今年の一つのテーマとして、
「コミュニティ作りへのチャレンジ」
を掲げていきたいと思いました。
落合さんもまた、
落合マフィアを作ることを目指しているそうなので、
私もまた、いつの日か、
リクルートマフィアやPaypalマフィアならぬ、
「ソラマフィア」ができることを夢見ています。笑
おわりに
落合さんの文章は非常に明快で読みやすく、
圧倒的な教養と経験に裏打ちされた内容なので、
片時も飽きることなく読了できると思います。
本記事では扱っていない部分でも、
面白いところはたくさんあるので、
ぜひ読んでみてください!
みんなで力を合わせて、
日本を再興していきましょう。
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