マンガ ヘルプマン!から見る介護 5
第5巻、6巻、7巻は、百太郎の親友であり悪友の「神崎」がメインキャストとなって登場する。
:介護現場の矛盾
神崎は、居宅介護支援事業所で介護支援専門員として働く。しかし、目の当たりにするのは、現場を知らず、ろくな介護知識も持たず、独善的なケアプランを押し付ける傲慢なケアマネージャーたち。利益誘導型の計画書を作成する現場ケアマネジャー。利益を確保するために権力を振るう法人。
「日本の介護を変える」ために、神崎は奮闘する。
:介護支援専門員の仕事
介護支援専門員の仕事は、サービス事業種によって異なる。
入居系では、自分でケアプランを作成し、事業所の介護員がケアを提供する。そのため、対象者、ケア提供者、ケア内容、ケアの評価を目の前で確認できる。
一方、居宅系では、ケアマネジャーは対象者からニーズを引き出し、ケアプランを作成するが、実際のケア提供は介護事業所が行う。そのため、ケアプランがどのように実施されているかを確認するのは難しい。さらに、ケアマネジャーは1人で40件以上の案件を担当するため、ノルマに追われる状況にある。
:形骸化するケアプラン
ケアマネジャーの主な仕事は、被保険者本人の自立を支援するためのケアプランを作成することである。しかし、実際には、介護者家族の要望を優先したり、ノルマ処理のために形式的なケアプランを作成してしまうケースも多い。
神崎は、スタッフにアドバイスをする時、「計画書をみたら、誰の計画書かわかるもの」になるように作ろうと話している。本来は個人に沿った個別性のある計画書になるべきものだが、実情は誰もが同じような内容になっていて、計画書から個性がみられない。
近年、AIによるケアプラン作成の開発が進んでいる。AIは、基本情報と個別の希望を入力することで、個別性の高い計画書を作成できる。少なくとも現時点では、AIの方が人間よりも質の高いケアプランを作成できる可能性がある。
:本人中心の介護
介護保険制度にはいろいろと不備もあれば、柔軟な対応が出来なかったりする。しかし、大切なのは「目的」だ。みな思いは同じはず。手段の問題なのだ。いろいろな手段を使えるようにしておくこと。それが大切だ。
神崎たちは、制度を無視し、本人の希望を叶える支援をする。
介護保険制度は、頼めばなんでもやってもらえるものではない。サービスなので、無償でもない。対価がある。安いものは安いものなりの、高いものはそれなりの価格がつく。介護保険サービスも同じである。
本人が決めればいい。家族も本人のためを思って考えたらいい。告知という問題もあるが、やはり基本は、その人「本人」の事だということを忘れてはいけない。
この回も同じように、主題は【本人や家族が前向きに生きていけるか。】
その指標の一つである「笑顔」が見られているか。
そのために専門職が支援することが、正しいかはわからないが、間違っていないのではないかと問いかけている。利益優先する事業所と、制度優先の行政の間で振り回される高齢者と家族をみて、神崎たちは制度を無視し、本人の希望を叶える支援をする。
:百太郎の視点
そして一言、「決めるのはじじばばだろ」と。
この視点が介護を専門職とするものには必要だ。障碍者の権利擁護のスローガンに「Nothing about us Without us!」がある。「私たちのことを私たち抜きで話さないで!」ということだ。
その通り。今欠けているのはこの視点ではないか。
政治にしろ、男女平等、教育、生活の事を、自分事ととらえられない人たちが,さも正義のように話し合い決めていないだろうか。
:歌声喫茶
何年ぶりに読み返したのだろう。記憶になかったが、百太郎たちも『歌声喫茶』をやるとは。考える事は、私と同じなのだなと少しニヤケル。
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