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食の風景「やみつき蓮根かき揚げ」

 開け放しの窓のせいかな、目覚まし時計よりも蝉の声で目が覚めた。なんていう夏の日々を過ごしています。立秋過ぎても猛暑は収まる気配がまるでありません。
 暑さにすっかり参ってしまったあなたにこそ、美味しいご飯を食べて頂きたい、美味しいご飯で笑顔に、元気になってもらえたら嬉しい、そんな夏のお台所から、今日も腕を揮いました。まだ少し新物が味わえますから、好きなだけ、頂きます。と云う訳で、今日も蓮根料理をお届けします。

 煮てよし、焼いてよし、炒めてよし、蒸してよし、炊いてよし、の素晴らしい食材。そして今日は、「揚げます」

 小麦粉に水を入れさっくり混ぜます。そこに出汁の素、塩、そして青のり。今回は磯部かき揚げです。
 具材は蓮根、玉ねぎ、人参。エリンギやインゲンがあれば入れたい所ですが、今回は冷蔵庫にあるものだけで作りました。御覧下さい、蓮根の鮮度。きれいな断面です。

 菜箸でつまんでは油の中へそっと滑り込ませます。お玉で作ると形はきれいに出来ますが一個が大きくなります。食べる量を調節しやすいように一個を小さめに作りました。野菜は高めの温度でカラっと揚げるのが好き。そろそろかな、と思っても一度目はスルー。あと一息待つのです。するとこんがりとしたきつね色の、カラっとしたかき揚げが楽しめます。

 かき揚げと云えばかき揚げ丼がありますが、タネを油へ落として、引っ繰り返さずに揚げて見栄えを良くする方法があります。それに菜箸をくるっとさせて具材をまとめる手法も。どちらも職人の手元を見た事がありますが、油の中で思い通りに具材を操る箸捌きは、かっこいいなあと思います。

 さてお台所の私はというと、手早く次々揚げねば家族が帰って来ます。それにお腹の虫がぐうと鳴っては仕方がありません。今回は一度だけ引っ繰り返してさくさく作りました。

 揚げたてがコンロの隣へ並んでいきます。揚げ物をしていると、何故だか味見をしなくてはという義務感が、いえ、正直に申します、食いしん坊根性が頭を持ち上げて、気が付くと一個、手を伸ばしてぱくり。
「美味しいー」
 人参の千切りなどはさくさくに。玉ねぎは甘味が存分に出され、蓮根も厚い部分はもちもちのほくほく、薄い部分はチップスのよう。磯の香りが全体へ行き渡り、ほんのり塩味と野菜の甘味が結び付いています。これは、箸が止まらなくなる料理です。昔母が料理を仕上げては、「はあ~、又美味しいもの作っちゃったなあ」と言っていましたが、今ならその気持ちがよくわかります。
「美味しいものを食べさせたい」「美味しい料理を作りたい」という思いは、形となって表れるのだと思います。昔の自分はどうだったかな、ちゃんと「おいしいー!!」って口に出して言ってたかな。そんな事を考える間に、完成です。

大きな一個に見えますね

 夏の揚げ物は修行かという程汗をかきますが、それでも食べたい揚げたてのかき揚げです。

「いただきます」

今日の献立は
「炊き立てご飯と柴漬け
玉ねぎがえらいことになっていたので急遽予定変更して作った玉子スープ
蓮根の磯部かき揚げ
熱々の深蒸し茶」

 冷蔵庫へ切って冷やしておいたすいかを出し忘れました。しかし揚げ物だったから忘れたのでしょう、これで良かった事にします。家族にも好評でした。今年は良いペースで蓮根を味わえています。嬉しいです。

「ごちそうさまでした」

                      文と料理と写真・いち



今年の蓮根料理仲間の記事を貼り付けます。


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