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衛星データ利活用事例File.10:道路の劣化状況を衛星データでモニタリング
衛星データ解析実験室!sorano me×豊橋市
豊橋市とのコラボレーション企画!豊橋市で集めたアイデアの中で、サービスとして可能性のあるアイデアを実験的に検証していきます。2022年7月スタート!
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本件に取り組む理由
人工衛星で注目されている解析技術の一つに「干渉SAR」があります。
SAR (Synthetic Aperture Radar) は日本語で合成開口レーダー と呼ばれ、SARを搭載している人工衛星をSAR衛星と呼びます。このSAR衛星はマイクロ波を発射し、地表で跳ね返ったマイクロ波を受信して地表面の状態を観測します。
より詳細に知りたい方はこちらの記事を参照ください。
今回はこのSARを用いた干渉解析(差分干渉SAR)を下記の記事を参考にして実装してみたいと思います。
干渉SARは、同じ地点の異なる時期に撮影したSARデータから地表面で反射したマイクロ波のズレを解析することで例えば地盤沈下などの地表面のずれをmm~cm単位で観測できると言われています。
解析の流れ
今回はTellusというプラットフォームを利用し、SARセンサーはPALSAR-2を使って愛知県豊橋市付近で試してみたいと思います。
干渉SARはTellusOSで無料アドインを入れることで解析できます。
Tellusでは「TelluSAR」という干渉解析ツールを無料で公開しています。
「TelluSAR」はTellusのアカウント登録を行い下記リンクより「購入」ボタンを押して追加することで利用を開始できます。
TellusOSを開き、右上の「マイツール」の「TelluSAR」を選択します。
(Tellusのアカウント登録はこちら:https://www.tellusxdp.com/market/login)
![](https://assets.st-note.com/img/1680056392500-rfj0t9IZ1r.png?width=1200)
時期を指定します。
今回は下記期間で実施してみます。
①2014年8月8日と2018年9月28日
②2018年9月28日と2022年11月4日
先ほどの画面のマイツールから「新たに生成」をクリックしてSARセンサーの選択画面に移動します。
![](https://assets.st-note.com/img/1680056435724-kGKo0qZ60x.png)
「PALSAR-2」を選択して、隣にある「表示中の位置からbeforeを検索」をクリックします。
![](https://assets.st-note.com/img/1680056473145-y4wHWZsUs5.png)
様々な日付のシーンが出てきますので、比較したい ”before” と “after” のデータを選択します。
実際やってみるとわかりますが、同じ日付でも撮影しているエリアが異なります。目的のエリアが該当していることを確認しましょう。
撮影エリアに合致する比較対象の日時が隣に自動で出てきますので、選択して「生成」をクリックすると実行します。
![](https://assets.st-note.com/img/1680056511605-au9TWAgnih.png)
解析に多少時間はかかりますが、解析が終わったら”before”と”after”の「差分干渉」にチェックをつけると解析画像を表示することができます。
①2014年8月8日と2018年9月28日を比較してみると、東三河を含んだエリアでは以下のような画像が表示されました。
テレビでよくある砂嵐のような画像です。コヒーレンスも確認してみます。
![](https://assets.st-note.com/img/1680056551341-ymNKeFuDAr.png?width=1200)
コヒーレンス画像とは、選択した2枚の画像データ間の干渉性を示す指標と言われています。
マイクロ波の位相の比較をしていますが、位相値を明暗で可視化しています。
コヒーレンスが低いと暗く、高いと明るく表示されますが下記画像においては、、、どちらの傾向も見れていないようです。
つまり、干渉自体ができていない可能性があります。
※TelluSARでは位置ズレが生じないようなアルゴリズムを採用していますが、稀に位置ズレが発生するかもしれません。
(参考:TelluSARエンドユーザーガイドhttps://tellusar.tellusxdp.com/document/user_guide.pdf)
![](https://assets.st-note.com/img/1680056580913-flJyF4olY9.png?width=1200)
愛知県から出している情報で確認したところ、東三河エリアで2014年から2018年までに年1cm以上沈下した地域はないようでした。 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/429975.pdf ②2018年9月28日と2022年11月4日を比較してみます。 少し虹色がかった画像が得られました。しかし、この画像から地盤沈下または隆起が明らかにわかる干渉縞は見つけられません。差分干渉画像では、地表面の変位だけでなく大気・水蒸気などによるレーダー波の屈折の影響(衛星と地上間の距離変化)がある場合があります。下記画像では、地盤のズレによる影響ではなく、大気・水蒸気等の衛星と地上間の距離変化による干渉の可能性が高いと考えられます。
![](https://assets.st-note.com/img/1680056611183-KE7xJHUSaA.png?width=1200)
SAR干渉画像の見方についてはこちらも参照ください。
ちなみにコヒーレンス画像は下記になります。 先述の①2014年8月8日と2018年9月28日を比較した画像とは明らかに違います。
![](https://assets.st-note.com/img/1680056646847-VCWrKjnqBO.png?width=1200)
では、具体的にどのような画像が得られると地表面のズレと言えるのでしょうか。
国土地理院からも干渉SARデータを得ることができます。(こちら:地理院地図)
例えば、2016年12月28日に発生した茨城県北部の地震(M6.3)の前後を捉えたSARデータでは干渉縞が確認できます。
まずは下記矢印部、北茨城市市街地付近になります。
![](https://assets.st-note.com/img/1680056697495-CK4XsR3k34.png?width=1200)
そして下記画像がSARデータです。 北茨城市市街地から西約10kmの領域に干渉縞が集中しており、最大約27cmの衛星―地表間の距離伸長が観測されています。(詳細な情報は画像左下の赤丸部インフォメーションマークをクリックすることで確認できます)
![](https://assets.st-note.com/img/1680056720232-DXGLGad9AO.png?width=1200)
さらに拡大して透過度を上げて表示したものが下記です。
このくらい拡大してみると、SARデータと地図の道路もわかります。
例えば、赤丸で印をつけた箇所のように、干渉縞が集中している道路の変位をモニタリングしてみることで道路の劣化を効率的に発見できるかもしれません。
![](https://assets.st-note.com/img/1680056739042-oFIE69ENIo.png?width=1200)
さらに、下記はGoogle Mapの航空写真ですが、道路の白線まで見えます。
干渉SARで解析した箇所を光学衛星で実際に見てみる組み合わせも考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
差分干渉解析は衛星画像解析に一歩踏み込んだ難しい解析ですが、Tellus OSを使って意外と簡単に実施できると思いませんでしたか!?
必ずしも干渉SARだけが地盤沈下を測定する技術ではありませんが、沈下の有無を確認する手段の一つとしてはとても有意義な技術です。
Tellus OSをまだ使ったことのない方は是非試してみてはいかがでしょうか。
SARを利用した橋の劣化検知技術も開発されています。こちらもご覧ください。
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sorano meメンバー田中康平・玉置慎吾執筆
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