飛び降り自殺未遂レポ⑦
体が健常である内は、頭の中に常に逃げの選択肢があった。
その気になればいつでも自分で自分の命を絶てる。
それは自分でも気づかないうちに心の支えになっていたらしい。
手足が自由に動かせなくなった状況で、もはや自分の意思で死ぬことはできなくなった。
自分の内にあった、大切な自由への選択肢が消えた。
「こんなに不自由なのは生まれて初めてだ」と思った。
複雑骨折した左腕は、骨が体の外に露出していたらしい。
神経も断裂。
左腕切断の可能性さえあった。
そこで、背中の筋肉を左腕に移植することになった。
大きな手術だった。
私は全身麻酔で12時間眠っていた。
その日の晩も一晩中、私は水を求めて叫び続けていた。
手術後は9時間程度、飲み水はお預けなのだ。
辛い夜はこの日だけじゃなかった。
ある日の夕方、脳が誤作動を起こした。
全身に、ひきつったように力が入った。
自分の意思とは関係なく勝手に首がひん曲がる。
心配して声をかけてきた看護師さんに口を聞くこともできない。
看護師さんが「術後適応障害だ」と言っているのが聞こえた。
脳が暴走して全身が力む。自分の意思ではもう自分の体をコントロールできなかった。
間違いなく人生で最悪の夜だった。