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土を喰らう十二ヶ月

📗【土を喰らう十二ヶ月】
中江裕司 2022

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淘米調菜等
自手親見
精勤誠心而作
不町一念疎怠機慢
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・・・「山の中で畑を作って、旬のおいしいものを食べて、好き勝手に生きるのって素敵じゃない!」ここは妻の本家なのだ。廃村になって誰も住まなくなった茅葺きの古民家を安く譲り受けた。・・・家も整い、畑ができて、これからという時に妻は死んだ。山の生活を楽しみにしていた妻は亡く、私とさんしょ、一人と一匹で暮らすことになった。しまったと思っても後の祭り。こまったと言っても誰も助けてくれない・・・

ツトムさん:68歳
さんしょ:八重子が連れてきた犬。
真知子:43歳

人里離れた長野の山荘で、愛犬とともに生活をする老作家のツトム。畑で育てた野菜や近くで採れた山菜などを使って自らこしらえる料理は日々の楽しみの一つだ。担当編集者で恋人の真知子が時折東京から訪ねてくるのを待ちわびては、彼女と一緒に食事を楽しむ。しかしまだ、13年前に亡くなった妻の遺骨を今なお墓に納められずにいた。

自然の恵みに感謝して無駄なくいただく自給自足の暮らしで、一人の時には遠く雄大な信州の山を遠く眺め、真知子の訪問を前にいそいそと食事の準備に取り掛かる。四季折々の素材を調理し、一緒に食べる特別な時間が過ぎていく。
・・・だが、ずっとではない。雲は流れ、水も流れていく。時間も流れを止めることはない。
「好きな人と食べるご飯が、一番うまいじゃないか」
やっと私のことを見てくれたのね。でも、もう遅い。
「私、結婚することにしたの」

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米を洗ったり、菜などをととのえたりするとき、典座は直接、自分の手でやらねばならぬ。その材料を親しく見つめ、こまかいところまでゆきとどいた心であつかわねばならぬ。
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