見出し画像

北国街道殺人事件

📙『北国街道殺人事件』
内田康夫 1999

野尻湖の学術調査発掘現場から、妙な骨が出てきたという報告が、野尻駐在所にもたらされたのは、三月二十七日の午後二時頃のことである。「どうも、人間の骨みたいだし、そう古いものでもなさそうなんですがね」電話をかけてきたのは野尻湖小学校の徳武という若い教師で、いくぶん薄気味悪そうな声をしていた。

🖌️
良寛と一茶を卒論テーマに選んだ田尻風見子と野村良樹は、出雲崎へ調査旅行へと向かう。途中、野尻湖で人骨が発見されたことを喫茶店のマスターから聞いた風見子は、奇妙な繋がりを語る。風見子は野尻湖の人骨の死亡推定年と同じ時期、母親と出雲崎を訪れていた。良寛が晩年を過ごした「五合庵」ですれ違った二人連れのうちの一人がその地で死体で発見された。もう一人の方が犯人かもしれない。二人は「イナンは京都で・・・」と不思議な単語を使い話し合っていた・・・。

野尻湖は信濃町にあるが、信濃町には警察署はなく、四つの派出所が点在するだけである。長野市から信濃町までは三十キロ近い距離があるので、こういう騒ぎが起こると、多少もどかしい感じがする。しかし、夕刻前には、長野県警捜査一課の捜査員も、現場に大挙乗り込んできた。そのメンバーを指揮するのは、かつて「松川ダムバラバラ死体事件」や「戸隠殺人事件」、それに「信濃の国殺人事件」といった難事件を解決して、一躍名を上げた、「信濃のコロンボ」の異名を取る、長野県警捜査一課きっての名探偵・竹村岩男であった。

🖌️
信濃のコロンボシリーズ
「北国街道殺人事件」はドラマ化されています。
〈竹村警部〉を下記俳優さんが演じました。
堺正章  フジテレビ 1998
中村梅雀 テレビ東京 2002
寺脇康文 TBS               2016
伊藤淳史 テレビ東京 2021

📌
「良寛」一七五八年生 一八三一年没
「一茶」一七六三年生 一八二七年没
年表を眺めながら、風見子は次第に、この二人の性格や生活ぶりの類似点に興味を覚えていった。・・・年表を辿っていた風見子が、突然、ギョット視線を停めた。
「これ・・・」言いかけた言葉が喉の奥で詰まってしまった。
「なんだい?どうかしたのかい?」
野村が驚いて、テーブルの向うから、風見子を覗き込んだ。
「この人・・・良寛のお父さん、以南ていう人・・・」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?