手袋を買いに
「手袋を買いに」
新美南吉 1943
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寒い冬が北方から、狐の親子の棲んでいる森へもやって来ました。
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こっちの手、ほらこの人間の手をさし入れてね、この手にちょうどいい手袋頂戴って言うんだよ、わかったね、決して、こっちのお手々を出しちゃ駄目よ
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『新鮮な驚き』
子狐が初めて初雪を見る。雪の上を駆け回る。樅木からの落雪に驚く。
『優しい気持ち』
雪に触れ冷たくなった子狐をみて「手ぶくろ」を買ってあげようと思う母狐。
『狐のチカラ』
母狐が人間への不信感と、子狐の手を人間の手に変えてしまう不思議。
『人間の思いやり』
子狐とわかった後の帽子屋さんの主人の態度。ある窓の下から聞こえた子守唄。
『溶けていく不信感』
人間への信頼感を持ち始める子狐。それをみて首を傾げる母狐。
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お母さん狐は、「まあ!」とあきれましたが、「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやきました。
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新美南吉は愛知県半田市の出身の児童文学作家です。雑誌『赤い鳥』出身の作家の一人であり、彼の代表作『ごん狐』(1932)はこの雑誌に掲載されたのが初出。結核により29歳の若さで亡くなりました。作品数は多くありませんが、童話の他に童謡、詩、短歌、俳句や戯曲も残しました。宮沢賢治とよく似た境遇から、「北の賢治、南の南吉」と呼ばれています。