17、信憑性のない信憑性
99匹のうちの1匹
魚の座を奪われた。
僕、月の座標の上でひとりぼっちの王様。
クレーターの端っこで、宇宙(そら)を見下ろしています。見下ろした先の彼方が、まだあたたかいこと、僕はそれを無視してクレーターに埋まっている。冷たいその地表をあたたかいと錯覚することはわざとで、きみはそれを知っているけれど、僕はそれを知っているけれど、みんな、黙っていた。
失われた不安が体の表面ごと削れていって、暴力性が消えていく。
はい と いいえ が交わるところ。
あの時が嫌だったとか、やり直したいだとか、戻りたいだとか、そういうことはないけれど。受け入れたまま、歩いて行きたい。ことはほんとう。
捨てた靴を、まだお気に入りでありたい。
蒸し暑い夏の中で干涸びる。
崩れゆく鼓動も、伝う汗も、許してくれる寛大さが欲しかった。大丈夫だよ。
僕らはちょっと真面目で、ちょっと一生懸命なだけだって言いたかった。本当はテキトーで怠惰でも。
明日の雨は僕を殺す。
夏。
喉を掻きむしったまま、月光を浴びて待つ。例えだらけの世の中でも。