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そう言って彼女は歩いて行った

いつだって言葉を発する時、私たちは少しずつ嘘をついた。

感情を言葉にしても、それは誰かの価値観で凝り固まってしまったもので、私のものじゃあなかった。私は私の感情は私だけのものなのに、私の物には一生ならない。人の言葉で象られて囲まれた感情は、そこからずっと抜け出せずに私の口から淡々と出ていくのだ。新しい言葉を作ったって伝わらない。伝わらなければ意味はないのだ、

とハーシーは言った。

だから全てを知りたがった。

神になりたいと言った。

全てを式にして、方程式にして、解釈を一致させたがっていた。沈む夕陽の、太陽の中で、彼女は言った。叫んだ。僕の耳の横を、風が通り過ぎた。
彼女は傲慢なのだ。
全てを知ることなんて許されてはいない人間は、寿命というリミットがあって、それで僕たち楽しく生きられるんだよって。ハーシーは僕の心を読めない。
二人きりの世界なら、もしかして世界の事を少しは理解できるのかもしれないけど、残念ながら多くの人が街を歩いてご飯を食べていた。有限の人が生きていて、生まれて、死んでいた。死んでしまえれば少しは楽になれるのだろうか。救われるのだろうか。死は、救いか。
彼女は知らない。
能天気に今日も勉強をするだろう。己の知識欲に負けて、今日も勉強をするだろう。僕は怠惰を貪る。セイハンタイなのだ。僕たち。
誰も救わない、沈黙を貫く神はいるのだろうかと無神論者は言った。答えを用意しているのに、疑問符を乗せて。
遥か昔を考えた。
先祖を考えた。
アダムとイブはなぜリンゴを食べたのだろうか。キリンの首はいつまでも伸びていって、今、大気圏を越えました。いつか見た塔のように長く長く遠くに行ってしまいました。
夢なんて叶わないと、歩き出した少年は言った。
僕は何も言わなかった。
霞んでいく夜空があまりにも綺麗だったからかもしれません。目の前に映るのは、白い月しかないけれど。僕には霞んだ夜空に見えたよ。本当さ。時計の針は盗まれて、もう時間の概念など消えてしまったけれど、僕らは時間を持っていた。
歩いた先に彼女はいない。
走り出したら止まらなかった。いや、走ってなどいなかった。紅茶が冷めてしまいます。僕は歩いていた。彼女は先程違う道を歩いて、曲がって行きました。

喉に詰まった梅の種が、芽を出しました。

今年の春は、梅が、咲き誇るでしょう。

綺麗に、咲き誇るでしょう。