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16、まるでそれは、ウェルテル効果のように

 99匹のうちの1匹

僕らの導き出した50:50の結果は、ただの時間稼ぎだったみたいで、哀れにも、沈黙する他ない。

なくなってしまうこと
消えてしまうこと
忘れていくことしかできないこと


投げ飛ばされた体を必死に都合よく組み替えて、一刻も早く、羽を生み出さなければならない。そうしないと、僕らは死んでしまうこと。本能は知っていた。



ぬるいバスタブの上。

吐いた息が水蒸気に混じりあって、君もこれから、この夏と同じになるのだろうかと、泣きそうになる。いい加減な想像の中で、これから生きていくの? 僕らを置いて、君はわざと、呼吸をさせる。


どうにもならないことを、どうにかさせたくて。

とりあえず鼻を啜るけど、空気が溜まるばかりでどうにも空虚。血みどろのパスタを食べて海に潜れたら、どんなにいいだろうね。
あの晴れた青い空みたいに、あの深く溺れた海みたいに、あの頃に戻ったみたいな春に、綴じ込めた瞳を、はしゃいだあの救済を、来世また。

嘘吐きな君と同じ。


千秋楽まであと少し。

終わったはずのエンドロールの裏側で、
客席を見ていてよ。
君のせいで支配された感情の暴力性と陽炎。

抱き合ったまま、

僕ら、

落下する。