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空寝ひつじ
2023年2月4日 16:14
仕事帰りにポストを見ると、真っ白な封筒が一つ、置いてあった。その封筒には本当に、ただ一つも文字が書いていない。 だけど、送り主はすぐにわかった。 知る限りこんな手紙をよこすのは一人しかいない。 足早に家に入ると、コートを脱いで封筒を開ける。ほんのりとオレンジの香りがして、手紙を持ったまま肌寒いベランダに出た。 十二月中旬、この時期の外は寒い。 ポケットから煙草を取り出し、火をつける。