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空寝ひつじ
2023年1月16日 23:08
僕の背中に降り注ぐ朝日はほの暖かく、少し湿り気のあるひんやりとした空気はなんだか僕の心を湿っぽくさせる。手に持った赤褐色の黒バラは、寝起きみたいな部屋着姿の僕には全く似合わなかった。 だけど、あの人はバラが好きだった。「華やかで、愛って感じするでしょ? だから好き」 部屋の窓から街を見下ろすと、ちょうど黒バラを置いた街角が見える。 陽が傾くに連れて、バラは路地の暗闇に吸い込まれていく