駅中の階段の世界線
駅中の階段の世界線とは、駅等でエスカレーターではなく階段を積極的に選ぶ人間だけが見ることができる世界である。
「エスカレーターか階段かを選べる場合、階段を歩く」という選択をとる人間が階段の世界線の住民だ。
この世界には、誰でも簡単に移動することができる。
この世界に所属する人間はよく運動をする。もしくは何かしらを頑張り始めた人間が多い(ように見える)
階段の世界線にいると、エスカレーターの方に足を進める人々とは異なる動きをすることになる。人々の大きな流れは自然とエスカレーターの方に向かっており、自分の動きが周りと異なるようになる。
そして同じ場所を歩いているはずなのに、景色が大きくかわる。
多くの場合、階段は空いている。
階段は空いているのだ。混雑している駅だったとしても、階段が空いていることがある。長い階段などは特にそうだ。
その上りの心地よさ。足は確かにややキツく、息切れもするが、それだけだ。狭いエスカレーターでジッと立って他者に自分を運んでもらうことよりも、自らの足で、自ら歩みを進んで階段を上るというその対比がつまびらかになる。
階段はチャレンジであり試練だ。しかしそれが心地よい。
また、階段は大したチャレンジではない。少し疲れる程度だ。だが達成感はある。
階段を使うたびに、自信があふれる。自分の足が自分を運んだのだと。
階段を使うたびに、若さをほんの少しだけ得る。
そうした日常を、ほんの少しの労力で手に入れられるのだ。
これが階段の世界線の住民が見ている世界だと思う。