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車いすママの日常 13(トイプードルのジャムのこと)

我が家にはトイプードルが3匹います。
一番上の子はジャム、カラーはレッド、11歳、男の子。
ちょっと毛布ぐちゃぐちゃですが。ソファーがお気に入りです。

まさか我が家に犬がやってくるなんて、想像もできませんでした。

ハムスターを飼いたいねと話していたある日、この子を見た途端息子が

「この子、連れて帰ろう。連れて帰ろうよ」

と言ったのです。

あれは息子がまだ2歳だったかな。動物を飼うなんて言語道断!という感じだった息子が、唯一ハムスターならいいと言っていた息子が、「連れて帰らないとダメだよ」と言った。
それがジャムでした。

旦那は小さい頃犬を飼っていたらしく、しかし外飼い犬だったので室内犬はよくわからないとのこと。私も全く無知だったので、犬を飼うための本を買いました。

そこに買いてあったのは、
「とにかく上下関係をしっかり教え込むこと。悪いことをした時は容赦なくひっくり返し、犬にとって一番恐怖(すぐに攻撃体制に入れないから、らしい)である仰向けの姿勢にして、怒鳴りつける。飼い主がなめられてはいけない」
という内容。

ええ。
そんなに厳しくしないといけないの?
と不信感はあったものの、私はその通りにしました。

うちに来たばかりの小さいジャム

に、ことあるごとに怒鳴り散らしていました。わたし。

こんなに小さいのに、
母犬から産まれてすぐに引き離されて、
甘えたくても甘えられなくて、
全然知らない人のところに連れてこられて、
自分に置き替えたら耐えられないくらい寂しくて辛いのに、
怒ってばかりいたんです、わたし。

なんか違うな、と思いながらも、でもそうしないといけないんだ、と思い込んでいました。

そうしたらジャムは私の姿を見るだけでサークルの隅っこに逃げて、ガタガタ震えるようになったのです。

なんだか涙が出てきてしまって。
ああ私はなんてひどいことをしたんだろう、とその時気づきました。でももう遅い。ジャムは私を見ると震え出すのです。涙が止まりませんでした。

当時、私の尊敬するムツゴロウさんがwebサイトで質問を受け付けてくださっていて、そこに私は今まで私が犯してきたひどい態度を全て書き綴りました。

もっと楽しい日々を夢見て犬を迎えたのに、犬にとってこんなに恐ろしい環境を作ってしまった。
どうしたらいいのかわからない。

と書いたらムツゴロウさんはすぐに返信をくださいました。

「私だったら、まず仔犬を迎えたら、抱いて寝ます。懐に大事に大事に抱えて、よく来たね、頑張ってきたんだね、お母さんと離れて寂しかったね、でも僕がいるから大丈夫だからね、ずっと僕が守るからね、と優しく撫でながら、毎日毎日抱いて眠ります」

一語一句あっているわけではありません。でもこんなふうな内容だったことは強烈に記憶しています。

涙が止まりませんでした。

私はなんてひどいことをしたんだろう、と、ジャムに申し訳なくて、涙がとまりませんてした。

それから私はすぐに、震えるジャムを膝に抱っこして、ひたすらに謝りました。ごめん、こんなふうになりたかったわけじゃないのに、ごめん、ジャムだって、寂しかったよね、つらかったよね、初めて来た家で、何をしたら正しいかなんてわからなかったよね、ごめん、本当にごめん、もう怒らないからね、ごめんね、と必死に必死に謝りました。抱きしめながら。

それからはジャムが粗相をしても、悪さをしても、こら!とは言うけれど、ひっくり返したり力任せに怒ることはしませんでした。

我が家は夜寝る時はサークルに入れるのだけど、ジャムは夜電気を消すと寂しくて泣く時がありました。その時はジャムが納得するまでずっと抱っこをして、撫で続けました。寂しいよね、1人で寝るなんて寂しいね、と声をかけながら撫でているといつのまにかおとなしくなって、うとうとしてくる。そのあとそっとサークルに入れると、そのまま眠るのです。かなり大きくなるまで、これは毎晩必ずやっていました。

すると成長とともにトイレはきちんと外さずにできるようになり、例えば息子のぬいぐるみには手を出さないとか、人間の食べ物には手を出さないとか、しっかりルールを理解するようになりました。

↑私が車いすから床に降りてくつろいでいると、必ずくっついてくるかわいいジャム。

今では我が家の犬たちの長として、ドッグランで下の子がからまれていると守りに行くし、下の子が悪さをすると叱りに行くし、頼りになる兄ちゃんになりました。

ジャムはあの一件以来、なぜか私にベッタリな子になり、分離不安では?と心配になるほどになりました。トイレに行くだけでも姿が見えないと心配でパタパタとついてくるのです。しかしお留守番はちゃんとできるので、そこがまた賢いところです(親バカ)。

私の車いすの背中に乗るのが大好きで、背中に乗せてくれよぉといつも目の前で座り、そして背中にハマります。狭いけど密着できるから安心するらしいです。何時間でもここにいます。

しかし私はこの状態だと車いすに寄り掛かることができず、さらに浅く座ることになるので長くはもちません。ごめんよと言いながら最近はすぐに降ろしています。

でもやっぱりね、私にはお腹を見せないのです。怖さが残っているんでしょうね。息子にはお腹を見せるけど、私には見せない。ちなみにジャムは旦那とはお互い気が合わないらしくあまり関わらないので甘えたりはしません。

私が一番かわいがっているのはジャムなので、私のアカウントの写真はジャムなのです↓

犬を家族に迎えてわかったことがあります。

犬は、犬、という名前がついているだけで、人間と何も変わらないんだな、ということです。

最初は人間が主導権を、というところを必死に守ろうとしてきました。でも考えてみたら、犬だって私たちと同じように「今はちょっと食べたくないんだよ」とか「ちょっと具合悪いから抱っこしてくれると安心できるんだけど」とか「甘えたいのよ」とか、心はあるよね、と。それをぜーんぶ無視して、ご飯の時間はご飯!抱っこは今無理!とか、ルールを決められたら、人間だって息が詰まっちゃう。だから我が家は犬も人間も境界線なく接することにしています。とにかく何を言いたいのかを、ちゃんと正面から目を見て聞く。これを大事にしています。

もう今は、3匹が今何を言いたいのか、大体わかるようになりました。と、思っています。

抱っこしてくれない?と目の前に座った時、どうしても用事の途中だったら「ごめん、今無理だから待っててね」と言って、用事が終わったときに「おまたせ」と抱っこする。

ジャムは小さい頃からご飯の食べが良くありません。普段もご飯を食べないと「えー食べないの?お腹減っちゃうよ?」と声をかけて、一度片付ける。そのあとしばらく経ってから「ご飯食べる?」と聞くと、食べる時は座るし、食べたくない時は座らない。それでYES、NOと判断しています。食べる、と言った時は本当にガツガツ食べるのです。だから意思疎通できていると私は思っています(親バカ)。

トイレに行ったら「おー出たの?偉かったねぇ」とほめる。ジャムはみんなのトイレ(台所の一角に置いてある大きめの、誰でも使用して良いトイレ)を私が掃除しているときにもよおすと必ず、「かあちゃん、おれ、おしっこしたいんだけどいい?」とそわそわそわそわとやってきて私にお伺いを立て、私が「ジャム、今ごめん、無理だからホームでやってきて」と言うとちゃんと自分のサークルに行ってしてくるのです(ちなみにうちは自分のサークルのことを「ホーム」と教えています)。最初、これに驚きました。自分のサークルのトイレは普段使わないのに、こういう時はちゃんとそこでするのです。ちゃんとわかってる!と思いました。それから何度もこんなやり取りが普通にできているので、ジャムはある程度ちゃんと言葉をわかっているなと信じています(親バカバンザイ)。

「今日はお外寒いんだよ」
とか
「お父さん帰ってくるかなー」
とか、
普通の会話もします。
常に話しかけています。人間にするみたいに。

そうやっていたら、なんだか犬たちも状況を見るようになり、無理に我を通そうとはしなくなりました。ダメなものはダメ、ここはかなり厳しくしていますが、それもちゃんと理解しているように感じています。逆に私が暇そうにしていると「今なら抱っこ、いけるんじゃね?」と察して颯爽と現れ、「抱っこいける?」と目の前で座る。嬉しそうに。本当におもしろいなと日々、感じています。

ジャムたちに出会えて、本当に心が豊かになりました。こんな世界知らなかった。たくさんの幸せをもらっています。

ちなみに我が家は一番目のジャムは私に、二番目のモコは旦那に、三番目の来々(らいらい)は息子に懐いています。ほかの犬たちのことはまた別の機会に。

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