『レモン哀歌』
「庭にたくさんレモンがなっているから」と
知り合いの方にレモンを12個もいただいた。
レモンといえばある詩を思い出す。
高村光太郎の『レモン哀歌』である。
中学校の国語便覧で初めてこの詩を読んだ時、
私はその世界に浮遊して
光太郎と一緒に智恵子の死の瀬戸際を見守っているかのような気持ちになった。
カーテンから漏れる柔らかな日差し。
白いシーツの上の爽やかな黄色いレモンと細い指。
部屋中に広がるレモンの香り。
それからレモンを手にすると
ほんの一瞬、なんとなく静謐なものを捧げもつような
不思議な感覚を覚えるようになった。
私の胸はまた、レモンの香りでいっぱいになった。
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