95.どんなに切れるハサミも絆は切れない
202号室の西口実です。
店の片付けをした後、あかりちゃんの髪をカットしたんだ。
今は『SUNRISE』で働いてもらってるけど、あかりちゃんはもともとこの店のお客さん。
カットしてて、懐かしい気持ちになったよ。
お店のローンもなんとか返せてるし、翔も良い子に育ってくれてて、ホッとしてるよ。
妻と別れた時にね、翔の親権を僕が取って、けどまだ翔は小さかったから。
母親がいないって、残酷なことをしてしまった。
この店を持つ話から亀裂が入っちゃってさ。
僕は自分の夢を優先してしまった。
翔とも距離をつくってしまったんじゃないかと不安になってね。
でも、玉平さんが言ってくれたんだ。
「どんなに切れるハサミだって、親子の絆は切ることができない」
さすがは玉平さん。
僕は『たまひらハイツ』に来れて幸せだよ。
あかりちゃんに、ずっと一人で生きて行くつもりなのか聞かれたけど、心配しないで。
僕は一人じゃないよ。
『たまひらハイツ』のみんなが家族だから。
ん?
あかりちゃん、自分が隣の部屋に住んでることを気にしてたのかい?
「わたしが西口さんの隣にいたら…迷惑ですか?」
って、そんなわけないじゃないか。
だって僕が『たまひらハイツ』を紹介したんだから(笑)。
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