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他地域との差別化は本当に必要なのか
先週末に大学の授業の授業の一環で静岡県の下田に行った。授業のテーマは環境問題であるが、あえてここでは2日間の滞在で感じたことを綴りたい。
2日目に地元の高校生及び大人と一緒に地域の魅力化に関するワークショップを行った。私は高校時代の島根県での学びを活かそうと、関係人口の創造が重要ではないかという趣旨の提案をした。現実問題として国内にいる人間の数は限られているから、移住やUターンの促進だけでは不十分だろうという予測をふまえての発言をしたつもりだった。地元の人も、関係人口の重要性について異論は無いようだった。しかし、次に発せられた言葉が私にとって衝撃だった。
”関係人口を増やそうという取組は下田でもやっている。しかし全国津々浦々で同様の動きがあるため、他との差別化を図らなければならない。”
そんなの当たり前だという人も沢山いるのは知っている。経済的な視点で見ればそれは疑いようも無いだろう。「もしこのまちに住むなら」という前提に立ってこの言葉を聞いた私には、どうも納得がいかなかった。それは地元の人も移住してきた人もみんな、下田の良さを述べるのにどこか他の地域と比較していた人なんて一人もいなかったから。自然が豊かとか、人が良いとか、景色が好きとか、、、ではなぜ、先のような発言が生まれて来るのだろうか。それは他の地域にライバル意識を持ってしまっているからではないか。人間と同じで地域もそれぞれに良さがあり、あの名曲の可視にもあるようにナンバーワンでなくても良いのだ。
そこに住む人が自分たちの地域を誇りに思っていること。それこそが一番の魅力となるだろう。言うは易く行うは難しで、これが案外難しい。綺麗事では到底片付けられない部分がたくさんあるのはわかる。それでもそういう嫌な部分も含めて受け入れることが大切ではないだろうか。人間だって同じだと思う。誰もが長所も短所も持っているけれど、それを受け止め合い助け合いながら生きている。
地域という言葉にとらわれすぎず、そこで生活する人々が楽しく生きるためには何ができるのか。そんなことから考え始めてみてもいいのかもしれない。確かにどこの地域に住むかを検討する際に複数の地域を比較するかもしれない。でも、最終の決め手は案外、人との出会いだったりする。地域の魅力化は人の魅力化から始まるのかもしれない。