ラジカセで28年前にタイムスリップ
昔は、好きなラジオ番組があるとカセットテープに録音をして、繰り返し何度も何度も聞いていた。実家にはそのカセットテープがおそらく100本以上は残っているはず。
そのうちの何本かを何年か前に持って帰ってきていたが、聞かずにそのままだった。
家の中の音響環境をちょっと改善したいなと思って、ゴソゴソとあちこち動かす。リビングにあるアンプには、ラジオのチューナーが付いていない。そこで、しばらく使っていなかったソニーのCDラジカセをつないでみることにした。
この機種自体はバブルが弾けたあとに発売されたもので、高機能ラジカセが大流行していたときよりも少しあとの世代のもの。だから、ハイポジとかタイプⅡとか、カセットテープのこだわったものは使えないものではあるけれど、回路の設計自体が良いのか音はとても良かった。また、当時MDが出始めた頃でもあったので、光出力端子までついている。
FMアンテナ端子があったり、ラインアウトがあったりとラジカセとしては拡張性を意識したもので、結構気に入っている。なんだかんだと、これも20年以上使っている。
ラジカセのラインアウトからプリメインアンプへ。
我が家のオーディオは、本格的にオーディオを楽しむという感じではない。雑多な寄せ集めで、なんとか音楽を楽しめるようにという感じ。こだわりだしたら、きっと深い沼で有ることは重々承知している。
プリメインアンプの電源を入れ、ラジカセから音を鳴らしてみる。
このラジカセを繋ぐ前に東芝のCDラジカセ(カセットはないから正式にはラジカセとは言わないだろうけれど、そういうもの)をつないで同じように音を鳴らしてみた。これでチューナ代わりになれば見っけものと思ったから。しかしながら、ラジカセのスピーカから流れ出る音と同様、ものすごくスカスカでショボい音だった。
ソニーのラジカセの話に戻ると、東芝のしょぼい音を聞いていたがために、感動的に良い音に聞こえる。回路は腐っていなかった。
気を良くして、FMアンテナ端子にテレビのアンテナ線をなんとか工夫してつなげる。我が家の電波環境はあまり良くないので、ラジカセの内蔵アンテナでは放送がうまく入らない。アンテナ線をつないで周波数を合わせてみるとFM放送が透き通って聞こえる。
「おお、FM放送ってこんなに音質が良かったっけ?」
ラジカセのスピーカから聞いている音とはやっぱり違う。アタリマエのことかもしれない。アンプに大きなスピーカとラジカセのスピーカでは勝負にならないに決まっている。
次にCDを流してみる。
ブルーレイレコーダーも一応アンプに繋いでいるのだが、CDをブルーレイレコーダーからかけるよりもラジカセのCDプレーヤから流す方が音がいい。そんなことってあるのかな?でも、やっぱり音がいい。
そして、最後。
120分のノーマルカセットテープ。ラベルを何も貼っていなかったので、いつのなんの放送かはわからない。
カセットテープをラジカセに入れて、流してみる。
そこには1992年11月のNHK-FM ミュージック・スクエア金曜日の放送が入っていた。デューク・エリントンのA列車で行こうが流れ、DJの声が聞こえてくる。音楽もまた、懐かしい。
28年前は、すぐ目の前に存在していた。
思った以上に劣化していなかった。
デジタルで保存し直したほうがいいか、ちょっと悩んでしまう。
それにしても道具一つで、時間というものを超越することができる。
アナログだからできることなのだろうか?
ここのところ、古いものを改めて使ってみるたびに、そんなことを無性に感じる。