サステナビリティー時代のカップヌードル進化論 ー安藤宏基 日清食品ホールディングス 社長・CEO【世界経営者会議】
第21回日経フォーラム 世界経営者会議に、Nサロン招待枠で参加させていただきました。
このような機会を与えていただきありがとうございます。
栄養士の立場から聞いていてとても面白かった、安藤宏基 日清食品ホールディングス 社長・CEOのセッションを書き起こします。
セッション
NHKドラマまんぷくの子供役のげんちゃんは私です、と笑顔から始まった安藤宏基氏のセッション。
サステナビリティー時代のカップヌードルについて、具体的なことをお話ししてくださいました。
サスティナブルな時代においてどのような企業活動を行っていくべきか
ごみの焼却問題についてリサイクルという方法もあるが、発電はどうかという提案をしたい。
まず、カップヌードルはおいしいことが前提である。
カップヌードルの発売から60年が経過し、取り巻く環境が変化した。
1.簡単調理
2.長期保存
3.手軽な価格
4.衛生で安全
↓
1.簡単調理
2.長期保存
3.手軽な価格
4.栄養
5.環境保全
カップヌードルを取り巻く問題
気候変動問題:温室効果ガスの削減
資源活用問題:世界の人口増加により90億人を超える、資源が足りるという人と足りないという人がいる
2030年のカップヌードルがどうなるか
1.バイオマス素材へのシフト
カップヌードルは改良を繰り返してきた。
容器のバイオマス素材率0%→71%→現在81%。
将来的には97%までの引き上げを目指す。
すぐにできない、徐々にやらざるを得ない。
2.ごみ発電の有効活用
世界の全てのごみの総和は4億3000万トン、うち廃プラごみが425万トンであり、廃棄物全体の1%を占めている。
汚れが少ないものはリサイクルできるが、汚れが多いごみは焼却(サーマルリサイクル)しなければならない。
リサイクルは水を大量に使うという問題点がある。
焼却と埋め立てには違いがある。
生分解性プラスチック(植物由来)は土にかえるからエコと言われるが、CO2排出量は4.62である。実は焼却したほうがCO2排出量は0.03と少ない。
確かに生分解はいいと思うが、CO2問題から考えると異なる面もある。
カップヌードルのバイオマスECOカップはサーマルリサイクル。
現在再生可能エネルギーは高価だが、ごみの再資源化として電力会社でごみを焼却し、日清食品が電力として買い取ることを検討している。
ステーキ150gはCO2排出量2026、カップヌードルは412である。
レストランも実はCO2排出量が高い。
将来は、エネルギーや塩分といった栄養表示に、CO2排出量が具体的に示される時代が来るかもしれない。
3.Neo Natural Meat
4.培養肉(代替え肉・大豆ベース)の開発
カップヌードルの「謎肉」は大豆たんぱくのNeo Narural Meatを使用している。
CO2排出量は、大豆肉1.0、鶏肉1.7、豚肉2.8、牛肉は12.0であり、「謎肉」はエコな食べ物だ。
※オリジナルカロリーとは異なる。
バイオ肉はヴィーガンに対応している。
カップヌードルは容器も中身もサステナビリティに進化し続けている。
2030年にカップヌードルは器・具材すべての面でサスティナブルな形態に進化する。
Q&A
Q.サステナビリティーという言葉
A.すぐにやることはできない。
コストがかかるからやめるではなく、時代に即してやっていく。
それをやるんだという前提で行う。
Q.バイオ肉(?)を取り込まなければお客さんは買ってくれないと考えているか。
A.ヴィーガンはまずい、食べ物はおいしくなければいけない。
それをおいしくつくるのがフードテックである。
おいしくつくるにはテクノロジーが必要。
エコを意識している人は若者の層に多いと感じている。
エシックスや、倫理的問題、生態系問題を意識している。
ベジタリアンは台湾や中国に多いが、日本は疎いと感じている。
日本人はうまさ優先ではないか。
でも今若い人はコネクトしている。
動物を殺生するのは悪いことだと思っているのかもしれない。
私はうまさ優先ですが(微笑み)
Q.「カップヌードルをぶっつぶせ」という書籍があるが、カップヌードルをぶっつぶせたか?
A.ぶっつぶせてはいないが、内側から変えていった。
中身を今どんどん変えていってる。
外見は崩せてないけどそれが私にできること。
社員はいま好き放題やってるから取り締まるのが大変。
CMがひどいことになっている。
昔のイメージをもつお客さまから相談室に苦情が来る。
しかし、インターネットでは1500万回を超え再生されてるから何も言えない、ジェネレーションギャップだと思っている。
社内に公正委員会を作ったが、若者に洗脳されてしまってなんでもOKになってしまっていて困っている。
そういう状況である(微笑み)。
感想
安藤さんの「おいしくなければならない」に深く共感しました。
一般の方から「栄養士はカップヌードルやマクドナルドを食べないんでしょ?」と言われることがありますが、ときどき食べます。
健康に良くないからと食べない方もいますが、私個人は一定期間の中でトータルバランスをとることが重要と考えています。
美味しいと思うもの、好きなものを、健康のために我慢し続けるのはつらいです。
安藤さんと、別セッションのカサノバさんのお話を聞いて、カップヌードルも、マクドナルドも、どちらも社会・環境・人についてたくさんのことを考えて作られている食べ物だと感じました。
また、大企業の視野の広さと、社会的責任の大きさを強く感じました。
カップヌードルのCO2排出量削減の取り組みについて詳しく知らなかったのでとても勉強になりました。
しかし、バイオ肉が本物のお肉と置き換わった将来、食肉産業がどうなるのか少し気がかりです。
これから調べていきたいと思います。
伝統ある企業がCMに若者の感性をとり入れ、従来の顧客とのはざまで困っていると微笑まれる安藤さんのお人柄を感じました。
30分という短い時間では足りない素晴らしいセッションでした。
サステナビリティー時代のカップヌードルの進化が楽しみです。
お話の続きを聞きたいです。