短歌集『ツムジカゼ』
注意する君の眼でまた一人
ロープを手に掛け宙に浮くのだ
嫌な音を掻き消してくれ扇風機
今日は声が一段と聞こえる
耳栓で行き交う音を塞いだら
朝だけは僕の独壇場に
死にそうで助けを求めるその手すら
受け取らずして取り出すスマホ
一発の弾丸貫き泣く者を
慰めるのは穴ぼこの身体
眼の前で崩れる「何か」をみないふり
微笑を貼ってやり過ごすのだ
泣きそうな貴方を抱きしめてるのは
貴方に絶望しきった自分
窓辺から飛び立つ未来を想像し
勇気のなさに嫌気が差すだけ
ツムジカゼ 上に立ってはいけないと
言われても尚その画に触れる