Q10を愛したように、世界を愛せよ。
この言葉を聞いて、すぐにピンと来た人と握手をしたい。
いや、ハグくらいしたい。
どんな内容かは覚えていないけど、「なんか良かったよな。あれ。」とふと思い出してしまうドラマや映画がある。
寒い夜の帰り道。
満員電車で息苦しさを感じたとき。
大好きな人と美味しいご飯を食べて笑い合ったとき。
そんなときに一瞬頭をよぎる作品が、生きていれば一つや二つはあると思う。
僕にとって『Q10(キュート)』はそんな作品だ。
リアルタイムで観たときの僕は中学2年生で、青春とか、愛とか、なんも理解していなかった。
でも妙に印象に残っていて、ドラマの物哀しさ、心に響く表現、高橋優さんのエンディングが記憶にずっとこびりついていたのだ。
今の表現で伝えるなら”エモいドラマ”だったんだと思う。
そしてこの前の土曜日。
別のドラマを観るために開いたTVerで、たまたま本作を見つけた。
観ることに少し迷いが生じたのは、この土日をそれで使い切ってしまう可能性が高いから。
でも、それでも、観たい……。
ということでTVerで1、2話をサクッと観て、残りはHuluの契約をして一気見してしまった。
なんならKindleで文庫本まで買ってしまった。
そして今。ひとしきり本作を堪能して、深呼吸してからこれを書いている。
本当に良い作品っていうのは、観たあとの余韻が大きすぎて、一人で抱えることが難しいんだな、これが。
※ここから先はドラマのネタバレを含みます。
『Q10』は、2010年に日テレで放送されたドラマである。
主演は佐藤健さん、前田敦子さん。
クラスメイトや先生も個性的なのに、ドラマの世界観が”ありふれた日常”に感じるのが本作のすごい点だと思う。
そしてありふれた日常に感じるからこそ、いろいろな教訓があるし、まるで自分の物語かのように深く心に突き刺さるのだ。
本記事では全話を改めて鑑賞して、特に印象深かった点を2つ紹介したい。
成り立たせるモノ全てを愛する。それよ
Q10と月子(福田麻由子)が未来に帰るために、そしてQ10が現代に居続けることで生じる歴史の歪みを直すためには、平太自身がQ10のリセットボタンを押さなければいけない。
でもQ10といつまでも一緒にいたい平太はリセットボタンを押すことを躊躇してしまうー。
最終話では平太がリセットボタンを押す決心をするところまでが丁寧に描かれている。
平太が最後にリセットボタンを押すことに踏み切ったきっかけは、Q10を送った未来(70年後)の自分からの手紙だった。
キュートを愛する=世界を愛する??
最初にこの手紙を読んだとき、平太はキュートと世界が結びつかず、腑に落ちないでいた。
しかし、父親(光石研)との会話をきっかけに平太はその意味を理解する。
その人を愛するということは、その人の人格を形成するものを全て愛する。
ということは、それは世界を愛することになる……。
中坊だった自分が13年経った今でも覚えていた本場面は、より味わい深いものとなって僕の心に深く突き刺さった。
Q10を現代に残したままにすると、歴史に歪みが生じて、560万人が死ぬことになるー。
Q10か、どこにいるかもわからない560万人か。
高校生なら、いや大人だって目の前の相手を選んでしまいそうだが、平太は世界を選んだ。
Q10を成り立たせている世界を想像して。
誰かを愛することが世界を愛することになる。
スケールの大きなことを、僕たちが生きている小さな規模で伝えてくれる名場面だ。
愛も勇気も平和もこの地球上に、あると思えばきっとあるのよ
本作のテーマは「愛」であると、文庫本のあとがきに記載されている。
とはいえ「愛」と言っても、そこから広がる話はたくさんある。
しかし『Q10』を最後まで見終えると、本作のメッセージは「信じれば、愛は必ずある」というものだと気づく。
先ほど紹介した未来の平太からの手紙には、ほかにも以下のようなことが記載されていた。
Q10は、余命少ない平太の妻が「自分に出会う前の平太を見たい」という願いから開発されたロボットだった。
そのロボットが完成したときに、平太はそれまで忘れかけていた(消された)Q10の存在を確信できたのである。
自分の記憶を疑うほど存在が怪しかったQ10がいたなら、愛だって、勇気だって、平和だって、信じ続ければ確かにカタチを持って現れる。
それが本作が、70年後の平太が伝えたかったことなんじゃないかと思うのだ。
『Q10』の最終回ではドラマでは必ず表示されるアレが少しだけ違っている。
それを最後に紹介して、本記事を締めくくりたい。
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