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わたしの父3

父が亡くなったとの一報は、すぐに祖母の家に居る私達にも届いた。
だが正直、私はその時の事を何も覚えていない。

気がついたら自宅に戻っていて、沢山の大人たちが集まって葬儀の用意をしていた。
自宅葬だった。

わたしが覚えていることは、沢山の人の中心にいる、1人の女性。
その女性は、狂ったように泣いていた。
色々なひとに代わる代わるなだめられ、落ち着かせられて尚、項垂れ泣いていた。

初めは、誰かも分からなかった。
近づこうとしても、周りの人に止められた。
女性の姿を見ようとしても、大人に阻まれ見ることが出来なかった。

わたしが、その女性を母だと認識したのは大人になってからだった。

母は、父の死に強烈な自己嫌悪を持ったのだ。
凄まじい、罪の意識を持たずには居られなかったのだろうと思う。父の命を奪ったのは自分だと自身を責め立てたのだ。

結局、父の死から葬儀が終わるまでの間の記憶の中で、母と一緒に何かをした記憶は無い。
その間だけ、ぽっかりと母との記憶が抜け落ちている。きっと母はそれだけ自身を保つことが難しく、わが子にもかまう心の余裕が無かったのだろうとあの頃の事を思い出すと感じる。
今のわたしが、その時の母を抱きしめられたらどれだけ良かっただろう。 

結局、父は沢山の傷を母や家族に負わせて逝ってしまった。きっと心の弱さが根底にあって、本人にもどうしようも無かったのかも知れないけれど…こんなカタチでお別れになるとは思わなかった。
大人になった今、父の大好きだったビールを一緒に飲み交わし、ゆっくりと話してみたいなと思ってしまう。
どんな人だったのか、何が辛かったのか、ひとつひとつ話を聞けたら良いのにと思う。

自死を選んでしまった父。
家庭も、自身がきっかけ作りをしてしまったが上手く行かなくて辛かったのだろう。
仕事も少し特殊で、需要が減って来ていた。
父親(私から見て祖父)はとても厳しい人だった。

逃げ場が、無かった。
お酒と、暴力に逃げて
最終的には、自死してしまった父。

わたしの記憶に残る、父のお話し。

ありがとうございました。


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