#12 オロチおじさんと子ザル
優しいおじさん🐵
2024年3月16日
午後3時半頃、モンキーセンターのスタッフの方が素敵なシーンを紹介してくださいました。
手招きされた場所に向かうと、餌場入口の植木に隠れるように、子ザルを抱いて眠そうにしているひとりのオス猿がいました。
オス猿の名前は『オロチ』
抱かれている子ザルは2023年生まれの男の子
名前は付いていないのですが、母親の名前が『マミヤ』なので『マミヤのベビ(ベビちゃん)』と呼ばれています。
ちなみに、
【ニホンザルのオスは子育てには参加しない】そうです。
理由は、発情期になるとオスは複数のメスと恋愛をするようで、母親であるメスとは違い『自分の子』という自覚を持つことができないから…のようです。
そんな事情を知ったうえで、このシーンを目撃すると感じ方が変わるかもしれませんね。
今回は、この優しい『オロチ』おじさんと子ザルの観察記録です。
おじさんの背中に乗る子ザル🐵
先ほどの写真を撮ってから約10分後、オロチ達はまだその場に居ました。
しかし、暖かい場所に移動する為なのかオロチが立ち上がると、ヒョイっと子ザルが彼の背中に乗ったのです。
残念ながら、あまりの可愛さに写真を撮らずに見入っていた為、背中に乗った直後の写真はありません。
ニホンザルの子ども(主に赤ちゃん期)は母親のお腹にしがみついたり、背中に乗って移動することが多いので、オロチの背中に乗った子ザルは慣れたものです。
一方、乗られた側のオロチは不慣れなようで、私には戸惑っているように見えました。
おじさんと子ザルの攻防戦🐵
子ザルを背中に乗せたまま、オロチは猫のようにグイーンと背伸びをしました。
寝起きの背伸びというより『降りてくれない?』と子ザルに伝えているように見えました。
対称的に子ザルの方は『降りないですよ』と言わんばかりの真剣な表情で、両手でガシッとオロチに掴まっています。
背伸びをしても子ザルが降りてくれないので、オロチは両手を広めに開いたまま立ち止まっています。子ザルの重みに耐えながら「さて、どうしたものか」と悩んでいるのか、細かく視線が動きます。
そのまま10秒ほど考えると、何か決めたのでしょう。
重たいのか、背中に違和感を感じているからなのか、ヨタヨタとゆっくりと歩き始めました。
7~8歩ほど歩くと一度足を止めましたが、子ザルに全く降りる様子はありません。
さらに7~8歩ほど歩いて立ち止まると、また10秒程考えてからグイーンと背伸びをしましたが…
それでも子ザルは降りません。
『降りて欲しいオロチ』と『絶対に降りたくない子ザル』の攻防戦です。
オロチおじさん
困ってしまったのか、一旦座って様子をみるようです。
座ってみたものの、全く離れる気配のない子ザル。
オロチは周りで毛づくろいをしているおサル達を少し羨ましそうに見まわすと、自分の毛づくろいを始めました。
子ザルはピトッとオロチの背中に顔をくっつけると、母親に甘える時のように「キュィッキュィッ、キュィッ」と3回甲高い鳴き声をあげました。
その声を聞いた直後です。
オロチは左足で背中を数回ポリポリと掻くと、また何か考えているような表情を見せました。
数秒後、背中の子ザルが「キュィッ」と鳴きました。
その鳴き方は、まるで「オロチおじさん?」とオロチを呼ぶようでした。
子ザルの鳴き声に反応するように、オロチは左後ろ→右後ろと振り返りました。
この時の子ザルの表情は、オロチと何か意思疎通が取れたのか、それともオロチの視線に子ザルが少しビビッているのか…
真相は子ザルに聞いてみないと分かりません。
座り込んでから1分後、またオロチが立ち上がりました。
やはり降りて欲しいようで、またグイーンと背伸びをしたオロチ。
それに対して、またギュッと彼の毛を掴む子ザル。
子ザルは名ジョッキーのように重心を後ろに下げて、オロチのお尻にしっかりと掴まっています。
子ザルをお尻に乗せたまま、オロチはその場に留まりたかったようですが、来園者が近くに来たので、他のおサル達が毛づくろいしている方に少し移動すると再び腰を下ろしました。
地面に座った子ザルはオロチの背中の毛をギュッと掴み直すと、小さな声で「ホッ、キュィッ」と甘えるように鳴きました。
さらに少しだけ場所を移動してオロチが座ると、また子ザルが「キュィッ」と鳴きながらオロチの毛をギュッと掴みました。
すると、それが合図になったかのようにオロチが立ち上がりました。
なんとか子ザルに降りて欲しいオロチは、すぐに背伸びをします。
そして、また腰を下ろします。
それでも子ザルは降りません。
「ぜったい離れたくない!」の気持ちを伝えるように、しっかりと両手をオロチの腰に回して完全に抱き着いています。
この後、同じような攻防戦が繰り広げられたあと、オロチは背中に子ザルを乗せたまま、見晴らしの良い場所に移動しました。
逆光の為『ライオンキング』のような雰囲気の写真になりましたが
「もう今日は このままで良いか」とオロチ自身が受け入れているようにも感じます。
もうすぐ今日最後のご飯タイム(餌撒き)です。
観念したオロチは子ザルの毛づくろいをしてあげるようです。
この写真を撮った5分後、ご飯タイムが始まる直前、餌場の中心に子ザルを抱くオロチの姿がありました。
ご飯タイムが始まると、一斉に大勢のサル達が集まったので、私はオロチ達を見失ってしまいました。
スタッフの方に伺うと、この日はご飯タイムが終わったあとも2人一緒に居たそうです。
おサル社会の子育てにも変化があるのかも🐵
本来、子育てには参加しないと言われているニホンザルのオス。
しかし、淡路ザルには『リーダー(オス)が立場の弱い子ザルを育てた』など、優しいオス猿のエピソードがあります。
私がモンキーセンターで観察しているとオロチだけではなく、他にもオス猿が子ザルを抱いて一緒に寝ていたり、母親が居なくなった子ザル達の面倒をみているオス猿もいます。
今回のオロチは背中に乗られることに対して嫌そうにしながらも、子ザルに対して手荒いことはせず、常に優しく接していました。
もし母親なら、背中に乗られたくない時には怒った表情を見せたり、強引に手で払いのけるのではないでしょうか。
淡路ザル、ニホンザルの社会でも時代と共に子育てに対する考え方が変化しているのかもしれませんね。
ますます興味が湧いてきました。
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