#13 SP キクヒメ ~身辺警護猿~
13代目リーダー👑ビッグ
2024年4月
桜が咲く頃になると、淡路島モンキーセンターのおサル達の恋の季節もほぼ終息です。
恋愛中のおサル達が大騒ぎしていた冬とは雰囲気も変わり、全体的に少しのんびりしているように感じます。
しかし、まだまだ絶賛恋愛中のおサルもいます。
こちらは淡路島モンキーセンターの『13代目リーダー ビッグ』
年齢は20代半ば、人間で換算すると70代半ばでしょうか。
思い返してみても、昨年秋の恋のシーズン開始時から、ビッグは常にお気に入りのメスにくっついているか、メスを追いかけてウロウロしているように思います。
恋の季節、ニホンザルは複数の相手と恋愛をするようで、ビッグのお相手も時々変わるのですが、4月上旬はプリコの長女がお気に入りのようです。
しかし、残念ながらビッグは彼女の恋愛対象ではないようで、彼女は隙あらば彼から逃げようとしているようでした。
お気に入りのメスに翻弄されている群れのリーダーを観察していると、私以外にもビッグの様子を観察しているオス猿を発見しました。
ビッグが居る場所には、必ずと言って良いほど同じオス猿が近くにいるのです。
その名は✨キクヒメ
彼の名前は『キクヒメ』ですが、センター内では愛称の『キクちゃん』と呼ばれています。
年齢は20歳くらい。群れの中の順位は5~7番目あたりのようです。
この『キクちゃん』がリーダーのビッグの近くに居ることが多いのです。
彼女にメロメロなご様子のビッグ。
対照的に全く興味のない彼女。
人間なら「あんたなんか興味ないのよ!」とハッキリお断りすることもできますが、完全な序列のあるニホンザル社会はそうはいかないのでしょう。
相手は群れのリーダー。完全拒否ができないようで、ビッグがベッタリくっついていてもしばらくは受け入れていました。
しかし、ビッグがさらにくっつこうとすると「ギャッ!」と歯をむき出して怒りの声をあげて移動します。
移動しても必ずビッグが追いかけ、彼女が足を止めるとまたビッグが彼女にくっつく…
こんな状態がずっと繰り返されていました。
そんな2人の近くにはキクちゃんが居ない時の方が少なく、ほぼ付きっきりの状態でした。
一体キクちゃんは何をしているのでしょうか。
ビッグのSP?
2024年4月7日~8日
私はビッグに付いて回るキクちゃんを観察することにしました。
キクちゃんを観察する=ビッグを観察することになります。
群れの中で体格の大きさもNo.1級のビッグは識別しやすいおサルです。
カッコン前で彼女にベッタリしていると思えば、お客様のエサやり体験が始まると彼女と共にエサ小屋へ移動。
彼女が屋根上に逃げれば追いかけてベッタリ、今度はエサ小屋の裏へ逃げる彼女…
『春の大運動会』と表現できるくらい、2人は餌場の中をグルグルと周回していました。
キクちゃんは寝転がっていますが、完全に寝ているわけではありません。
プリコの長女は頭の良いおサルさんと言われています。
歩く速さに緩急を付けたり、行先をコロコロ変えてビッグを翻弄しますがビッグは諦めません。
また彼女が管理室の裏の方へ逃げました。すぐにビッグが追います。
尾行する探偵のように、わずかな間をおいてキクちゃんが動きました。
キクちゃんを観察しながら気づきました。
ビッグ達の近くにはいますが、必ず少し距離を空けています。
そして、寝転がったり、うつむいたり、全く違う方向を見ていても2人が動くと必ず何かしらの反応が見られます。
すぐに追うこともあれば、視線だけで追ったり。
そんな中で、私が特に素晴らしいと感じたテクニックがあります。
それは、2人が移動してもキクちゃんがその場に留まっていた時のこと。
キクちゃんは「きっとビッグ達は一周して、ここに戻ってくる!」と先読みをしているようなのです。
さらに別の場面では2人が移動したあと、数秒間はその場に留まっていましたが、その後2人を追い始めたのです。
あくまでも個人的な見解ですが、キクちゃんは音(声)を聞いて判断しているのではないかと思うのです。
ビッグは彼女に逃げられたくない時に「カカカカッ!」と特徴的な声を出します。それに対して彼女は「ギャッ!」と拒絶する声を出します。
その後、怒った彼女が移動するパターンが多いのです。
キクちゃんの動きを見ていると、その時の声を聞いて2人の状態や居場所を判断しているように見えました。
どうやらキクちゃん、リーダー👑ビッグの身辺警護をしているようです。
しかも相当優秀なSPとお見受けいたしました。
任務遂行しただけなのに…
4月8日 16時25分ごろ
夕方のご飯タイム終了後、ビッグ達は餌場の上の方でくつろいでいました。
山に帰る時はリーダーが先陣を切る…という訳ではないようですが、ビッグが帰るまでは餌場に残っているおサルが多いように感じます。
この日もビッグの近くにはセカンドリーダーのチョウナン、No.3?No.4?のガッツ、メス頭(No.1)プリコなど、群れの中心のサル達が集っていました。
この時ビッグは彼女に毛づくろいをしてもらっていたのですが、そこに他のおサルが毛づくろいに参加しようと近付いたのです。
少し離れた場所から見ていたSPキクヒメ、素早く動きました。
近付いたおサルに向かって「ウホッホッ」と小さな声でけん制しました。
するとなぜかビッグが素早く起き上がり、キクちゃんを目でけん制したのです。
ビッグは『キクちゃんが邪魔をしに来た』と勘違いをしたのでしょうか。
それとも『おまえが出るまでもない』と注意したのでしょうか。
警護対象者であるビッグにけん制されたキクちゃんですが、数歩移動するとまたビッグ達に向かって「ウホッホッ」「ガルルッ」と小声を出していました。
そんなキクちゃんに向かって、一人のオス猿が勢いよく向かっていきました!
気付いたキクちゃんは、その場を離れます。
勢いよく向かってきたのは群れのセカンドリーダー・チョウナンでした。
キクちゃんはすぐにチョウナンにお尻を向けて、マウンティングをお願いしています。
チョウナン『調子に乗るなよ!』
キクちゃん『出過ぎたことをしました。すみません!』
と言っていたかは分かりませんが、キクちゃんはマウンティングが終わるとすぐにチョウナンの背後に回り、毛づくろいを始めました。
私には完全に『謝罪の毛づくろい』に見えました。
しかし、SPキクヒメの仕事はまだ終わっていませんでした。
毛づくろいの途中、時々キクちゃんは顔を上げてチラッと正面を見ていました。
視線の先には、またまた彼女にベッタリのビッグが見えます。
チョウナンの毛づくろい中でも、任務を忘れてはいないようです。
潜入捜査官ばりの見事な仕事ぶりに感心しました。
キクヒメの本心は?
ビッグに付いて回るキクちゃんの行動について、センターの方々の見解をお聞きしたところ、「本人に聞かないと分からないけど」と苦笑いされましたが『ビッグを守るというよりは、好意の現れではないか』とのことでした。
キクちゃんは元々オスの仲間が多く、オスと毛づくろいをすることが多いそうです。
私の目には素晴らしく仕事のできる優秀なSPに見えましたが、もしかしたら今回の行動はビッグ同様、キクちゃんもまだ恋の季節が続いていただけなのかもしれませんね。
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