ワタシは宇宙人 「破水」 #27
やっと安定期に入り、お腹の赤ちゃんも順調に大きくなっていた。
その時のわたしは長いツワリで肋骨が浮き出るほど痩せていた。お腹と胸はどんどん膨らみ大きくなる。なのに肋骨が何本も浮き出ている奇妙な身体になっていた。
しかしツワリが無くなると、打って変わって食べ物が美味しくなった。何を食べても「美味しい」のだ。話に聞いていたように、しっかり2人分の栄養を取るようになった。
やがてわたしの体に丸みが帯びてきた頃、お腹の中でグニョリと動いた。
わたしは慌てて服をめくると、お腹の表面はボコボコと動いて、赤ちゃんがお腹を蹴る形が見えた。
見えないけど、確かに存在する
早く会いたいな…
早く陣痛来ないかな。
暑い夏の8月。臨月を迎えた。
いよいよ、いつ陣痛が始まってもおかしくない時期にきた。陣痛の痛みとはどんなものなのだろうか。
祖母や母からは「痛みで障子の桟(さん)が見えなくならないと、ややこ(赤ん坊)は生まれない」と聞いていた。
とにかく案ずるより産むが易し。あれこれ心配しても何も始まらない。ドキドキしながらもその時を待つだけだった。
陣痛は時間をかけて、ゆっくり徐々に強くなって行くと聞いていた。胎児は母親の呼吸に合わせながら、時間をかけてゆっくり降りてくる…
はずだった…
8月も後半に差し掛かるある日。
夜中3時頃トイレに行こうと立った時だった。
トイレを目の前にしてわたしの下半身はビショビショになった。
破水したのだ。
わたしは混乱した。破水が先に起きるなんて想定外である。
わたしはすぐに夫と母を呼び、着替えてお産の準備をした。破水して5分も待たずに一発目の陣痛が始まった。
陣痛はいきなり1分おき、30秒おきの狭い間隔で容赦なく襲ってきた。破水した事で一気に胎児が下がったのだ。
助産院に連絡し、日が昇ってから朝向かうことにした。
本当にわたしはいつもいつも、イレギュラーな事ばかり起きるのだ。
そしていよいよ、出産がはじまる。