WKW 4K で観る『花様年華』~リサイタルに向けて、感性を研ぎ澄ますために~
ウォン・カーウァイ監督の作品を、監督自ら4Kレストアし、5作品を一挙公開するというビッグニュースを聞き、『天使の涙』~カーウァイ作品を映画館で鑑賞する前に~を書いたわけですが、早速行ってきました!
香港の名匠ウォン・カーウァイ監督作4Kレストア5作品をまとめた予告編【2022年8月19日より全国順次公開】
人生で観た映画ベスト3に入る大好きな『花様年華』
私のnoteで繰り返し取り上げてきたウォン・カーウァイ監督の作品。その中でも一番好きな作品は『花様年華』です。私が今まで観てきた映画の中でも、ベスト3に入るくらい好き! (←これ、過去の記事に書いたはずですが、もう一度書きます(笑))
10月10日にリサイタルを控えた今、歌の練習はもちろん、芸術家としての感性を研ぎ澄ますことも必要です。自分が大好きな映画、しかも芸術性の高いカーウァイ作品を大スクリーンで鑑賞することは、リサイタルにも活かせるはずだと信じでいます。
私が『花様年華』と出会ったのは、大学生のころ。レンタルビデオショップ(当時はまだVHSでした!)で偶然見つけました。ちょうど、同じくカーウァイ作品の『2046』が公開されたころだったので、特設コーナーが作られていたのかもしれません。
初めて『花様年華』観たときの感動と言ったら、ここに書ききれないほど。
「この美しいテーマ曲何!? レストランのシーンでナット・キング・コールが流れている!? このきれいなコーヒーカップなんだ!? 屋台で買い物するときの容器なんだ!?」
ストーリーはもちろん、音楽や小道具、セット、ロケ地など、細部にこだわった美しさに魅了されました。そしてそれらのすべてが、とても芸術性の高いもので、こんなに美しい映画があるのか! と喜びを感じたほどです。
その後私は、DVD、サウンドトラックCD、書籍、遂には、日本では手に入らないレベッカ・パン(スエンさん役。本業は歌手で、劇中でも彼女の歌が効果的に使われています)のCDを海外から取り寄せるほどのハマりようでした。
実は、今回のWKW 4Kより前にも、何度かカーウァイ作品はリバイバル上映されており、私も一度映画館のスクリーンで『花様年華』と『2046』を観賞したことがあります。
今回は何を観ようか……
WKW 4Kで上映される5作品は
『恋する惑星』
『天使の涙』
『ブエノスアイレス』
『花様年華』
『2046』
うーん、全部観たい! でもやっぱり『花様年華』を観よう!
4Kレストア版を観賞した感想
WKW 4Kはかなり話題になっているようで、劇場や作品によっては満席になっているとか。私が観賞した日もリバイバル上映とは思えないほどの入りで、その人気ぶりがうかがえました。
内容に触れるときりがないので、鑑賞後の率直な感想をひとこと。
「環境音のこだわりがすごい!」
私が、カーウァイ監督の映画を好きな大きな理由の一つは「音楽」ですが、今回気づいたのは、「生活音」「雑踏」「虫の音」など、環境音でした。部屋の中のシーンでも、どこか窓が開いているのかなと思わせるような屋外の音が聞こえたり、ある重要なシーンでは、静まり返った部屋の中で汽笛の音が聞こえたり。しかもそれぞれの音がさりげなく、小さいのです。映画館の劇場で鑑賞しないと気付かなかったほどのかすかな音。しかしそれらがしっかりとドラマを語っているのです。
カメラマンのクリストファー・ドイルが撮る映像の美しさは常に絶賛されるところで、どのシーンを観ても絵葉書のようで、映画館でも全身でその映像美を堪能していたのですが、音楽家である私は、音楽はもちろん、音そのものに酔いしれました。これは映画館で観ないと気づかなかった!
この日は興奮のあまり、よく眠れませんでした(笑)。
カーウァイ作品の映像美は、常に賞賛の対象となっていますが、以前他の記事にも書いたように、音楽へのこだわりも相当強いと私は思います。音楽ありきで映画が作られているのかな? と思うほどです。しかし音楽だけではなく、すべての「音」に神経が通っていることを今回再発見しました。カーウァイ監督の感性に脱帽。
これからWKW 4Kに行く方はもちろん、おうちでDVDをご覧になる方も、音に注目して
カーウァイ監督の作品を観ることをお薦めします!
感性を研ぎ澄ます
劇場という空間だからこそ感じられた、この細やかな音。カーウァイの、この繊細な感覚、美学への追及は、私たち芸術家には共感するところも多く、リサイタルに向けて大きな刺激をもらえました。ホールに足を運んでくださった方が、その場でしか体感できない細部まで楽しめる音楽を味わってもらうために、私も自分の美学を追及していきます。
木村優一のコンサート情報↓
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